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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第五十話 焦り
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「何か有るのか? エーリッヒ」
有るんだ。フェルナーをジッと見た。奴が姿勢を正した。容易ならん事を聞かされると思ったのだろう。その通りだ、これから話すことは容易ならん事だ。

「政治改革により帝国では地殻変動が起きようとしている。分かるな?」
「ああ、分かっている。貴族階級で没落する貴族が続出する。相対的に平民階級の地位が向上するだろう」
「その地殻変動はフェザーンにまで及ぼうとしている、いや既に及んでいる」
「フェザーンにか?」
「ああ」
そう、フェザーンだ。そう不思議そうな顔をするな、フェルナー。帝国、フェザーン、同盟は密接に繋がっているんだ。不思議な事じゃない。

「領地を失った貴族達だが彼らはフェザーン商人と密接に繋がっていた。金だけじゃない、物流も含めてだ」
「……」
「だが貴族達が領地を手放した事で金はともかく物流はこれまでのように一手に扱う事が出来なくなった」
「なるほど、既得権益を失いそこに独立商人が食い込んできたんだな」
「そうだ」

物流を扱っていた商人達は既得権益を奪われ独立商人、或いは同じように既得権益を奪われた商人達と凄まじい争いをしているらしい。フェザーンで発行されている電子新聞によると経営が傾きかけている企業もある一方で業績を伸ばしている企業もある。要するに下剋上、戦国時代に入ったわけだ。そして潰れる貴族はこれから多くなる。それが一体フェザーンにどういう影響をもたらすのか……。フェルナーも渋い表情をして考えている。

「このあたりで物流関係の企業を持とうと思う。フェザーンで経営の傾いた企業が有れば買い取りたいと考えている」
「商船なら今でも有るだろう」
「駄目だ、今の商船ではフェザーン回廊を超えられない」
「……」
フェルナーが口を噤んだ。ブラウンシュバイク公爵家が所有する商船、輸送会社は有る。だがそれは帝国領内でしか活動が出来ない。理由は帝国国籍の商船、輸送会社だからだ。

「辺境を開発しようとすれば同盟製の民生品が有った方が良い、そう思わないか? 人口百万は軽く達成出来る。問題は百万人の生活を維持向上させるインフラ整備、耕作機器、民生品だ」
フェルナーの顔を覗き込んだ。幾分身を引くようなそぶりを見せた。
「それは分かるが……」
「公爵家が所有する商船は帝国領内で活動させる。そしてフェザーン国籍の商船は辺境開発のために利用する」
「……」
考えている、フェルナーは考えている。

「フェザーンがそれを許すと思うか?」
「まず許さないだろうな。買収は認めても商船を向こうに出す事は認めない。フェザーンが交易の独占を崩す様な事は許す筈が無い」
「だったら意味が無いだろう」
そんな呆れた様な声を出すな。俺が傷付くとは思わないのか?

「そうでもない。例え同盟領
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