第五十話 焦り
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ならん。
問題は農奴だ。領地返上に伴い政府が農奴を買い取った。貴族達には良い収入になっただろう。政府はその農奴を解放し正民として扱う事に決めた。人権を尊重したわけじゃない。その方が生産力は間違いなく向上するからだ。だがその所為で元々いた領民達との間で対立が生じている。
領民達にとって農奴は一段下の階級だった。だがそれが解放され自分達と同じ階級になった。その事が不満らしい。人間、自分より下が有ると思えば優越感に浸れる。だがその下だと思っていた存在が自分と肩を並べるようになった。面白くない、生意気だというわけだ。ラインハルトがローエングラム伯爵家を継承した時にも似たような事が有ったんだろう。俺だってブラウンシュバイク公になった時は反発が大変だった。俺が説明するとフェルナーがウンウンと頷いた。
「なるほど、有りそうな事だな」
「もう分かるだろう?」
「ああ、その解放農奴を連れてくるという事だな?」
「その通りだ。このまま放置すれば対立が激化する。騒乱になりかねない。それじゃ生産力は上がらない」
フェルナーが“そうだな”と頷いた。
生産力だけじゃない、地方自治を統括する内務省にも負担がかかるだろう。場合によっては軍の出動なんて事態にもなりかねない。この問題を放置は出来ないのだ。
「だとするとブラウンシュバイク公爵家から出すのも解放農奴か」
「基本的にはそうなるね」
「どのくらい出すつもりだ? まさかとは思うが三十万全部か?」
「それは無い。義父上とも相談して適当な人数を出すよ」
フェルナーがホッとしたような表情を見せた。こいつ、最近俺と義父殿が衝突するんじゃないかと心配している気配が有る。こいつだけじゃないのかもしれないが……。もしかするとここに来たのは義父殿の差し金かな。フェルナーを使って疑問点を確認している? 可能性は有るな。
「それに来年以降は没落する貴族が続出する。彼らが抱えていた農奴を積極的に受け入れていく。人口百万人は軽く超えるだろう」
一千家も潰れれば一貴族一万人の農奴を抱えていたとしても一千万の解放農奴が出現する事になる。辺境開発のための人口資源は比較的容易に確保出来るだろうと俺は見ている。
門閥貴族なんて全滅したって全然構わないが俺が養子になったからブラウンシュバイク公爵家が傾いたなんて歴史書に書かれるのは御免だ。俺の代で繁栄の礎が築かれた、そう書かれるようにしてみせる。そうなればブラウンシュバイク公爵家以外の家も平民から養子を迎え入れるようになるかもしれない。つまり血統では無く実力の尊重だ。階級間の交流も少しずつ広がるだろう。
「分かった。疑念が晴れたよ。疲れているところを済まん。ゆっくり休んでくれ」
「待て、丁度良い、少し話したい事が有る」
立とうとしたフェルナーを押し留めた
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