第五十話 焦り
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。即ち彼はラインハルトの健康問題を重視したのではないかと俺は思っている。オーベルシュタインはラインハルトの寿命が長くない、いや極端に短い可能性があると予測したのだと思う。
後継者がいなければ帝国は混乱する。オーベルシュタインはそれを恐れたのだ。そして皇帝が幼ければ親身になって幼帝を補佐する人間が必要だ。ヒルダは母親でもあり政治的な才能も有る、適任だと言える。となれば政権基盤が脆弱である以上彼女の政治的地位と生まれてくる後継者の政治的地位を強固なものにする必要が有ると考えただろう。
だから皇妃ヒルダの誕生と嫡出子の誕生に異を唱えなかったのだと思う。側室と非嫡出子では政治的な立場が弱いと見たのだ。少しでも政治的な立場を強くするには皇位継承に関して正統性を確立する必要が有った。平民階級の不安はリスクとしてあったが帝国の混乱よりはましだと思ったのだろう。マリーンドルフ伯が権力欲のない人物だという事も判断材料としてあったかもしれない。苦渋の選択だろう……。
トントンとドアを叩く音がした。やれやれ、休む事も出来ないか……。もっとも休んでいないから文句も言えんな。
「どうぞ」
身体を起こして声をかけるとドアが開いてフェルナーが入って来た。一人だ。俺が簡易ベッドに腰掛けている姿を見て“出直そうか”と済まなさそうにしたが“気にしなくて良い”と言って止めた。
「用か?」
「いや、少し話したいと思って」
おどおどするな、お前らしくない。
「分かった、適当に座ってくれ」
フェルナーが椅子を俺の傍に持ってきて“済まんな”と言いながら座った。昔みたいだな、俺はベッドに腰掛けフェルナーは椅子に前かがみに坐っている。
「さっきの話だが」
「反対か?」
「いや、そうじゃないんだ。言っている事は良く分かる。宇宙が統一されれば辺境は発展するだろう。遷都が実行されればブラウンシュバイク星域が地の利を失う事も間違いない。だが気になる点もある。それを確認したいんだ」
フェルナーが俺をじっと見た。
「人は如何する? 一から始めるとなれば人の移住から始めなければならんぞ」
「最初はブラウンシュバイク公爵家の各領地から少しずつ移住させるしかないと思う」
フェルナーが首を横に振った。
「それでは駄目だ。発展するのに時間がかかり過ぎる。最低でも最初の五年で百万程度の人間は移住させ発展の基盤を作る必要があるだろう」
「他にも手はある。今回貴族達が借金の棒引きと引き換えに領地を返上したがそこで何が起きているか、知っているか?」
「いや、知らない。何か有るのか?」
「有る、ちょっと困った事になっているんだ」
フェルナーが不思議そうな顔をした。いかんな、ブラウンシュバイク公爵家の中でタスクチーム、或いはシャドウキャビネットのようなものを作らなければ
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