第五十話 焦り
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つはっきりしない。まず貴族階級には無い。リップシュタット戦役で門閥貴族を潰したからじゃない。戦後ラインハルトが自分に味方した貴族達を政治的にも経済的にも優遇しなかったからだ。ヒルダはともかく他のラインハルトに味方した貴族達は当てが外れたと思ったんじゃないかと思う。不満も持っただろう。彼らはリップシュタット戦役が権力闘争だけでは無く階級闘争でも有る事を軽視した、或いは認識していなかったと思う。
では平民階級に政権基盤が有ったか? こいつも疑問だ。確かに内乱以降、平民階級の政治的な地位は向上している。平民達はラインハルトの施政を支持しただろう。だが信頼しただろうか? 焦土作戦を行い辺境に苦痛を与えたのがラインハルトならヴェスターラントで住民二百万を見殺しにしたのもラインハルトなのだ。支持はしても何処かに不安は有ったと思う。何時自分達に牙をむくかと不信感を持っていただろう。
そういう不信感を増大させたのがヒルダとの結婚だと思う。彼女との結婚は皇帝ラインハルトが幾つか犯した政治的失策の一つではないかと俺は考えている。確かにヒルダには皇妃として適切な資質が有ったと思う。だからラインハルトの周囲からはヒルダとの結婚に対して反対の声は上がっていない。精々オーベルシュタインがマリーンドルフ伯に外戚として権力を振るうなと釘を刺したくらいだ。
だが皇妃としての資格は有っただろうか? 無い、としか言いようがない。ヒルダが伯爵家の娘である、その一点で資質は有っても資格は無かったと俺は判断している。彼女が皇妃になると知った平民達はまた貴族が外戚として権力を振るう時代が来るのではないかと不安になっただろう。そしてラインハルトに対しては貴族階級の復権を許すのかと不信感を抱いたと思う。皇妃は平民か下級貴族から選ぶべきだった。そうであれば平民達も不信感を抱かずに済んだ筈だ。平民でも皇妃になれるとなれば平民階級はラインハルトを無条件に支持しただろう。本当の意味でルドルフを否定したと感じて。
オーベルシュタインは平民階級の不安を分かっていたと思う。彼がマリーンドルフ伯爵にヒルダを皇妃にする事を考えているのかと警告した事がそれを示している。しかし現実にはオーベルシュタインが望まなかった事が起きた。ヒルダの妊娠と結婚、皇妃ヒルダの誕生だ。舌打ちしたい思いだっただろう。だが不思議なのはその事に対してオーベルシュタインが反対していない事だ。後継者が必要だから堕胎しろとは言わなかっただろうが政治的なリスクを訴えて側室に留めろと進言する事も出来た筈だ。だがオーベルシュタインは沈黙を保っている。一体何故か?
出来てしまったものは仕方がないと諦めたか? それともラインハルトが受け入れないと思ったからか? そうではないだろう。オーベルシュタインには反対出来ない理由が有ったとみるべきだ
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