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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十九話 辺境星域
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気が重くなった。皆が俺を見ている。ブラウンシュバイク公爵家にとんでもない損害をもたらす奴、そんな視線だな。

「誤解しないで欲しいのですが義務感だけで行うのではありません。ブラウンシュバイク公爵家のためになりますし利益が有ると思ったからです。辺境星域を皆が御荷物と思っていますが私はそうは思いません。あれは宝の山ですよ。皆気付かないだけです」
「……」
無言だ、誰も喋らない。信じられないんだろうな。辺境って貧乏だし人もいない、僻地だからな。だが利益が有ると言ったのは事実だしブラウンシュバイク公爵家のためになるのも事実だ。そして宝の山という事も。

「義父上、私は帝国の手で宇宙を統一しようと考えています。遠征を支えるだけの財政基盤を整えるのに最短でも五年、長引けば十年はかかるでしょう。その後、五年を目処に自由惑星同盟を、フェザーンを征服します」
「……」
「そうなった時、辺境は辺境では無くなりますよ」
皆が顔を見合わせた。

「如何いう事だ、エーリッヒ」
義父殿が低い声で問い掛けてきた。猜疑心一杯だな。
「旧同盟領から大勢の商人が辺境にやってきます。新たな商機を求めて」
リビングに唸り声が溢れた。
「帝国の人口は二百億を超えます。国境が無くなる事で彼らにとっては新しい市場が目の前に現れる事になる。利益を求めて先を争ってやって来るでしょう。元々民生品は向こうの方が品質は良い。その民生品がイゼルローン回廊、フェザーン回廊を超えて大量にやって来るんです。位置的に見てその恩恵を最初に受け取るのが辺境です。辺境は良質の民生品で溢れかえる事になる」

「なるほど、そういう事か……」
アンスバッハが呻くとシュトライトが唸った。義父殿も唸っている。シェーンコップとフェルナーが顔を見合わせてニヤリと笑った。どうして根性の悪い奴って直ぐ仲が良くなるのかな、不思議だ。普通は反発すると思うんだが……。大公夫人とエリザベートは素直に感心している。でもな、エリザベート。頼むから頬を上気させてうっとりと俺を見るのは止めなさい。そういうのは苦手なんだ。

「帝国の商人も同様です。彼らも旧同盟領を目指して交易船を出すでしょう、辺境を横断してです。これまでは来なかった交易船が常に辺境に来る事になります。そうなれば当然ですが交易が発生する。辺境は宇宙で最も多くの交易船が行き来する場所になる筈です」
まるでシルクロードだ。キャラバンを編成して行く先々で交易を行う。同じ事が宇宙で起こるだろう。

「それともう一つ重要な事が有ります」
「何だ、それは」
うん、今度の義父殿の声には興味有り気な響きが有る。良い傾向だ。
「宇宙を統一すれば帝国の領域は今よりずっと広くなります」
「そうだが」
「オーディンは帝国の奥深くに有ります。拡大した帝国を統治するには
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