第四十九話 辺境星域
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という嘆息が聞こえた。もう一つ嫌な現実を見せておくか。
「最近ですが辺境星域の貴族達からは領地替えの要望が出ています」
「領地替え?」
アンスバッハが訝しそうな声を出して周囲を見た。分かる人間が居るか確認したのだろう。残念だが皆も訝しんでいる。まあ最近の話だ、知っている人間は殆どいない。
「辺境では先が無いとみて領地替えを願っているのです。幸い領地を返上した貴族達がいる。その後任者にして欲しいと。自分達なら上手く治められると言っています……」
「政府はそれを受け入れるのですか」
「それは無かろう。それでは政府が一方的に損をする事になる。領地の返上は借金の棒引き、融資返済の放棄の対価になっているのだ」
義父殿がシュトライトの発言を否定した。その通りだ、政府は拒否した。返上された領地と辺境では人口も生産力も違う。国政改革で税を軽減した以上税収の不足が生じる。それを直轄領の増加、貴族達の借金の返済、融資資金の運用で得た利益の十分の一を徴収する事で補おうとしているのだ。そして開発を待ち望んでいるのは辺境だけではない。税収の低下を招く様な領地替えを受け入れる事は出来ない。
「なるほど、美味い肉の奪い合い、不味い肉の押し付け合いですか」
相変らず皮肉なもの言いだな、シェーンコップ。皆が顔を顰めているぞ。エリザベートも含めてな。
「それで政府は如何すると? 無視は出来ない、深入りもしたくないでは中途半端になるのではありませんか?」
コーヒーを飲みながらしれっと言うな、フェルナー。だがお前さんの言う通りだ、中途半端ではある。しかしこの場合大事なのは辺境の開発そのものよりも帝国が辺境の貴族達を切り捨てることは無いとフェザーンに示す事、そして貴族達に示す事だ。
「辺境を四つの宙域に区切り一年単位で順番に開発して行く事を考えています。つまり四年に一度の割合で政府が領地開発を援助する事になる。それを政府方針として発表するのです。七月には発表され即時に実施に入ります」
「なるほど、常に辺境の何処かを政府が援助しているという事ですか」
大公夫人が頷いている。その通りだ。政府は大規模ではないが継続して辺境を開発し続ける事になる。そして貴族領の開発は貴族が主体であり政府はあくまで支援だ。
「気持ちは分かりますが確かにフェルナー大佐の言う通り中途半端、思い切りが良くないですな」
アンスバッハが不機嫌そうに言うとシェーンコップがニヤリと笑った。まあこれじゃ危険視されても仕方ないか。裏切ったと疑われるのも半分以上は自業自得だろう。不徳の至り、だな。うん、ココアが美味い。
原作と違いこの世界では貴族達が滅んでいない。つまり帝国の財政は改善されていないのだ。大規模な開発は現時点では不可能だ。だが二、三年もすれば状況は劇的に変わる。
「四年後
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