第四十八話 薔薇の騎士
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「多分そうでしょうね」
大公夫妻がウンウンと頷いていたがラインハルト様が訝しそうにしているとそれに気付いた御二人が笑い声を上げた。
「昔と違って今の貴族には決算報告書と資産目録を作成する義務が有ってな。あまり酷いものを作ると領内の統治にも影響が出る。常日頃から気を付けねばならんのだ、楽は出来ん。伯爵夫人も苦労しているのではないかな?」
大公が問い掛けるとアンネローゼ様が小さく笑みを浮かべた。
「私はそれほど大きな所領を持っておりません。それに陛下が良い財務顧問を付けてくださいましたので」
「なるほど、陛下が。それは羨ましい事だ」
「大公閣下こそ御苦労をされているのではありませんか。ブラウンシュバイク公爵家は大家ですから」
「なに、当家には頼りになる息子がいるからな。あれは几帳面だから家令達を使って上手くやっているようだ」
大公がまた笑い声を上げるとアンネローゼ様、アマーリエ様も笑みを浮かべた。
「姉上、もしかして姉上も決算報告書と資産目録を作っているのですか?」
「勿論よ、ラインハルト。陛下から幾つか領地を頂いているのですもの。作る義務が有るわ。知らなかったの?」
「ええ、知りませんでした」
私も知らなかった。だが唖然としているラインハルト様と私を見て三人が可笑しそうにしている。
「まあ決算報告書と資産目録の事はエーリッヒが詳しい。あれが居れば面白い話が聞けたのだが生憎急な呼び出しがかかってしまった、残念な事だ。そうそう、卿らに宜しく伝えてくれとの事だった」
「あ、いえ、こちらこそ御配慮頂き感謝しておりますと御伝えください」
呼び出し? ブラウンシュバイク公を呼び出すとなればそれなりの人物、用件の筈だ。何が起きたのだろう? ラインハルト様も訝しんでいる。
「呼び出しと言いますと軍の方で何か有ったのでしょうか?」
ラインハルト様の問い掛けに大公が首を横に振った。
「いや、財務省と内務省の方だ。最近では軍よりもそちらで忙しくしている。あれには随分と苦労をかけさせてしまった」
大公の表情は沈痛と言って良かった。夫人も沈んだ表情だ。普通なら軍以外にも影響力を持ち始めたと自慢しそうなものだが……。
「さて余り長居をしてはいかんな、邪魔をする事になる。アマーリエ、我等はこれで失礼しよう。ゆっくりしていってくれ」
「ゆっくりしていってくださいね」
私達が“お気遣い有難うございます”と言うと大公は“うむ”と頷いて夫人とともにサンルームから去って行った。ホッとする気持ちともう少し話が聞きたいという変な感情が残った。以前は大公を嫌っていたが今では悪い方ではないと思える自分がいる。私だけではない、ラインハルト様も同じ様な事を感じているらしい。妙なものだ。
「財務省と内務省か、一体何が起きているのかな。キ
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