第四十八話 薔薇の騎士
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帝国暦488年 5月 24日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 ジークフリード・キルヒアイス
「まさかここで姉上と面会する事になるとは思いませんでした」
「そうね、私も思わなかったわ」
ラインハルト様とアンネローゼ様の会話に私も頷いた。確かにお二人の言う通りだ、このブラウンシュバイク公爵邸でアンネローゼ様と面会する事になるとは思わなかった。
ブラウンシュバイク公爵邸のサンルームは窓が開けてあるせいだろう、五月の穏やかな日差しと柔らかな風が入ってきた。公爵家に相応しい上品な白のテーブルと椅子、私達三人は寛ぎながらコーヒーを楽しんでいる。何とも不思議な気分だ。
「ヴェストパーレ男爵夫人が急に都合が悪くなって困っていたのです。シャフハウゼン子爵夫人に御願いしようかと思ったのですが宮内省がすんなり許可を出すかどうか不安でした。それを知った公が自分の所へと……。ブラウンシュバイク公爵邸なら宮内省も否とは言えませんからね」
「そうね」
ラインハルト様の言葉にアンネローゼ様が頷いた。
皇帝の寵姫であるアンネローゼ様の外出には政府の許可が要る、例えそれが弟であるラインハルト様との面会でもだ。当然だが外出先にも制限が有る。宮内省がその場所を不適当と判断すれば外出は許されない。それを考えれば新無憂宮のアンネローゼ様の部屋で会うのが簡単なのだがそこだと色々と窮屈なのだ。
またアンネローゼ様のお住まいになる南苑は皇帝の生活の場所でもある。ラインハルト様はともかく私は入れない。それにアンネローゼ様に仕える宮女達も必ずしもアンネローゼ様の味方だとは言えない。安心して会話をする事など到底不可能だ。これまではヴェストパーレ男爵夫人が場所を提供しれくれたのだが……。
ざわめきが起きた。視線を向けるとブラウンシュバイク大公夫妻が側近を連れてサンルームに近付いて来るところだった。サンルームには大公夫妻だけが入って来た。三人で立ち上がって出迎えた。
「本日は色々と御配慮いただき有難うございます」
ラインハルト様が頭を下げる、私とアンネローゼ様も頭を下げた。
「ああ、堅苦しい挨拶は止めてくれぬかな、ミューゼル大将。そういうのは昔から苦手なのだ。さ、遠慮せず座ってくれ。伯爵夫人も、それと卿、確かキルヒアイス中佐だったな、座ってくれ。我らも座らせてもらう」
五人で座ったが居心地が悪かった。平民で軍での階級も低い私が同席していて良いのか、そう思った。しかも大公は私の名前を知っていた、ちょっと驚きが有った。ラインハルト様も意外そうな顔をしている。
「ミューゼル大将、男爵夫人は急用が出来たとの事だが領地に戻られたのかな?」
「そのようです」
「なるほど、となると決算報告書か資産目録の関係かな。如何思う、アマーリエ」
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