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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十八話 薔薇の騎士
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軍人、イゼルローン要塞に送り込むには適任だと思ったが本当は一番向かない任務だったのかもしれない。失敗した時のリスクを軽視した。第七次イゼルローン要塞攻略戦の失敗、そしてその後の混乱はリスクを軽視した私に有ると言えるだろう。

「勿論帝国は無条件に引き渡せと要求しているわけでは無い。帝国に戻るか否かは本人達の意思に任せると言っている。帝国が同盟に要求したのは帰国の意思の有無の確認、そして帰国の意思が有る場合にはそれを妨げるなという事だ。帝国は本人だけでは無く家族も受け入れると言っている」
「なるほど」
無条件にと言えば同盟政府も反発するだろう。だが自分達に選ばせろと言われれば反発はし辛い。ましてローゼンリッターは優遇されていないのだ。

「捕虜交換は帝国政府からの正式な打診だが実際には軍が大きく絡んでいるのは間違いない」
「ブラウンシュバイク公ですか」
「そうだろうな。シェーンコップ大佐は貴官の助言に従って帝国で仕官したそうだ。ブラウンシュバイク公の側近と言って良い立場に居るらしい」
「大胆な……」

溜息が出た。帝国で仕官した方が良いと言ったのは私だがまさかブラウンシュバイク公の側近とは……。
「ローゼンリッターにとっては戻り易い環境が整った訳だ。連隊長だったシェーンコップ大佐はブラウンシュバイク公の側近。リューネブルク大将も帝国内でそれなりの地位に有る」
「そうですね。それで政府は何と?」
シトレ本部長が少し言い淀んだ。

「政府からはローゼンリッターの隊員を出来るだけ説得するようにと言われている」
「同盟に留まれとですか?」
私が問うとシトレ本部長が首を横に振った。
「違う、出来るだけ多くの隊員を帝国へ還すために説得しろという事だ」
「還すため?」
愕然としてシトレ本部長の顔を見た。本部長は無表情に私を見ている。

「出来るだけ多くの隊員を帝国に戻す。そうなればローゼンリッターは連隊としての保持は不可能。解隊して残った隊員は他の陸戦部隊に転属させる」
「……ではローゼンリッターの解隊が目的ですか」
「そうだ。連隊が保持出来ないとなれば解隊はおかしくは無い。残った隊員は帝国よりも同盟を選択したのだ。他の隊に配属されても誰からも裏切り者と蔑まれる事は無いだろう」
「……」
理屈はそうだろうが……。

「元々ローゼンリッターは亡命者からの希望で半世紀ほど前に作られた部隊だ。そこには同盟軍内部で自分達の働きを認めさせその立場を少しでも良くしたいという考えが有った。だが現状ではローゼンリッターは亡命者の立場の向上に役に立っているとは言い難い。ならば解隊するべきだろう」
「それが政府の考えですか、本部長は如何お考えなのです?」
「……」
本当は本部長の考えではないのか、そう思ったが本部長は無言だった。

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