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忘れられなければならない話
4部分:第四章
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第四章

 その席に座りながらだった。長老は明るく話をしていく。
「それで息子夫婦は独立しまして」
「今は家におられないのですか」
「はい、今は二人です」
 こう圭祐に話す。
「娘はソフィアの大学に行っていましてまだ帰ってきませんし」
「ソフィア。首都ですね」
「そうです」
 気さくに応えて右手の木杯にあるそのワインを飲む長老だった。赤ワインは甘く実に飲みやすい。それは圭祐にとってもであった。
「そこの大学に通ってるのですよ。いい娘ですよ」
「そうですか」
「息子はもう四十ですがね。娘はまだ二十で」
「二十歳ですか」
「歳を経てからの子でして」
 子煩悩そのものの言葉だった。
「可愛いのですよ」
「それでその娘さんは」
「はい、こちらです」
 すぐに懐から一枚の写真を出してきた。そこにはブロンドの髪に水色の瞳の実に奇麗な女性がいた。それがその娘さんだというのだ。
「どうですか?奇麗でしょう」
「ええ、確かに」
 その写真を見て素直に頷く彼だった。
「本当に」
「この娘はね。小さい時から」
 そう話をしていくのだった。しかしその時に。
 不意に外に気配を感じた。圭祐は自分の右手にある窓を見た。するとだった。
「おや!?」
「どうかしたんですか?」
「いや、さっき人がここを通り掛かりまして」
 こう言ったのである。
「人が窓の前を」
「人がですか」
「お婆さんでしたね」
 ちらりと見ただけだがそれはわかったのである。
「髪が黒くて鼻の高い」
「髪が黒くて鼻の高い」
 それを聞いた長老の顔が曇った。
「その老婆がですか」
「はい、そうです」
 そのまま答える彼だった。
「その人が今窓のところを」
「わかりました」
 それを聞くと急に強張った顔になる長老だった。しかしそれは終わらせてそのうえで元の朗らかな顔になって圭祐に元の娘の話をするのだった。
 その日はしこたま飲んだ。だが酒に強い彼は次の日酒は残っていなかった。長老が用意してくれたベッドから起きてトイレに行った。それから部屋に戻ろうとすると。
 長老が玄関から外に出るのが見えた。その手にスコップと斧を持っている。
「おや?」
 それを見て怪訝な顔になる。興味を持たなかったと言えば嘘になる。
 後をつけることにした。まだ朝は早い。明けたばかりである。長老はその明けたばかりの村の中を進んでいく。行く先はというと。
「あそこは」
 墓地だった。昨日見たその墓地に向かっていた。そうしてそこに来てある墓の前で。
 その墓を掘り出しはじめた。彼はそれを見ていよいよ怪訝な顔になった。
「何だ?まさか死体を」
 掘り出すのかと思った。そしてそれはその通りだった。
 死体を掘り出していた。そのうえで死体を出していた。そ
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