第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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同時に、輪廻転生を体現した存在だから。
未だハルヒを胸に抱いたまま軽く二度、三度とジャンプ。固まった筋肉を解し、戦闘に備える。強化は俺だけで施せる限界に。物理や魔法、それに呪詛の類は一度だけなら反射や無効化は可能。
大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと息を吐き出した。
大丈夫、こいつは素人。気付かれていないはずだ。
しかし……。
「その女を降ろす間ぐらいは待ってやっても良いんだよ」
一応、刀を構えながらもそう話し掛けて来る青年。意外に人が良いのか、それとも、俺がハルヒを解放しなければ、戦闘の際にハルヒが怪我をする事を恐れて居るのか。
……もしくは、解放されたハルヒを人海戦術で奪い去る心算なのか。
「その前にひとつ聞いても良いかな?」
ハルヒが怪我をする事を恐れるぐらいなら、自分の身を護る為にハルヒを盾になどしない。それに人が良いのなら、そもそも他人の生命を消費した召喚作業など行いはしない。
「お前、全国の保健所や動物愛護センターのハシゴを行ったのか?」
最初から疑問だった。使役する犬神の数の異常な多さと、それに個々の犬神の能力が俺の想定している犬神に比べてかなり低い事。
これは、能力。つまり個体が持つ怨みの量に関係なく数を集めた弊害ではないかと――
「人間に怨みを持つ犬の魂を手に入れるには、そこが一番簡単で、その上数が集められるからね」
簡単に答えを返して来る青年。確か一年間に日本で処分される野犬の数は三十万頭近くにも到達する。そして、もし、この内の一割も手に入れていたとしても三万あまりの犬神を手に入れているはず。ましてコイツが活動を開始してから既に四年。その間、真面な術者と遭遇した事がなければ――
もっとも、この目の前で野太刀を構えた青年のキャパ……式神の所持限界がどの程度あるのかは定かではありませんが。
犬神使いが普通どの程度の数の犬神を使役するのか知らない。……が、しかし、同じようなオサキギツネを使役する術者は複数使役する可能性が高い。更に、何モノの加護を得ているのか定かではありませんが、俺では不可能なレベルの回復力を手に入れて居て、九八年から始まったこの術式の基本や、おそらく事件を起こす時期、場所に至るまで完全にソイツの入れ知恵である可能性が高い以上……。
あの弓月さんの親戚の温泉旅館に投入した数から推測すると最低でもあの倍。もしかすると数千体の犬神を使役している可能性も有る、と考えるべきか。
「まぁ、素人のお前を相手にするのにちょうど良いぐらいのハンデやないかな」
ハルヒを離すのは危険。折角取り返したのに、俺の手から離した途端に銭形流人海戦術であっさりと奪われたら、あの場に残ってくれた有希や弓月さんに何と言い訳をしたら良いのか分から
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