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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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倒せなくとも多少なりとも動揺した相手を倒す事などそう難しい事ではない。
 視線で相手の動きを制している。そう言う雰囲気を醸し出しながら、油断なく観察を続ける俺。
 明らかに人間ではない回復力を示す相手。しかし、今まで俺の前に現われては自滅して行った連中とは少し違う感じもするのだが……。

「忠告に関しては感謝して置くよ」

 内容と態度がまったく違う状態。先ほど抜き放った長刀。日本刀としてはかなり長い部類の三尺以上の刀身。おそらく野太刀と称される古いタイプの日本刀を青眼に構える青年。
 ……構え自体はすっと立った非常に自然な構え。但し、この構えから感じるのは、何処から攻撃されても、三手から五手で俺の勝ちが予想出来る構えだと言う事。

 構えから想像すると、剣術に関しては完全な素人と言う訳でもないのか。確かに、術に比べると多少は危険な部分を感じなくもない。
 但し、それは飽くまでも素人ではない、と言うレベル。多少、刀を振った事はあるが、それでも達人クラスと死合いを演じた、と言う雰囲気は感じない。

 もっとも、これだけの回復力を持った存在に本当の意味での剣技と言う物も必要ではない、……とも思いますが。要は斬られた後に斬り返せば良いだけ、なので。
 無理に自らの身体を護らなければならない、とは感じないでしょうから。

 どの程度の傷までが修復出来る範囲か分かりませんが、それでも斬り跳ばれた左腕があっさりと回復している以上、致命的な部分。例えば頭などが完全に破壊されない限りは回復可能、の可能性が高い、……と考えて相手をするべきですかね。

「ねぇ――」

 一触即発。何時、戦いが始まっても不思議ではない状態。
 この野太刀を構えているヤツに取って俺は邪魔者でしかない。ましてハルヒはわざわざ攫って行った獲物。これはつまり、何等かの役に立てる為に攫ったと言う事なのだから、ここで彼女の身を諦める可能性も低い……と言う事。

「これから戦いになるのなら……勝ちなさい」

 自らが俺の両腕を占拠していながら、刀を持った相手に勝て。かなり無茶な命令を口にするハルヒ。そう思うのなら、少なくとも自分を放してくれ、と頼んでから言うのが普通の人間なのでしょうが――

「初めから負ける事が分かっている戦いなど挑まないさ」

 俺は基本的に小者なんでな。漢には負けると分かって居ても戦わなければいけない事がある、などと平気で口にする事は出来ないから。
 相変わらず軽い感じの答え。しかし、その言葉の中にかなりの余裕を滲ませる俺。
 もっとも、この自信は空元気や根拠のない自信などではなく、ある程度の根拠から発生する自信。確かに相手の力量は分からないけど、一度や二度の人生で剣を学んだだけの相手なら先ず負ける事はない。俺は仙童寅吉であると
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