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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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 転がりながら一閃。宙を舞って、今まさに青年の右肩に食らい付こうとした犬神を両断。
 そして、体勢を立て直そうとするついでに地面を這うかのように回転。その際に放たれた左脚が一体の犬神を消滅させる。

 成るほど、術に関しては素人でも、体術に関してはそれなりの物を持って居ると言う訳か。

 腕を振るうごと、脚を振るうごとに空中に描き出される黒い線……。自ら呼び出した犬神を倒す事による返りの風を受けながらも平然と立ち上がる青年。その瞬間、背後から接近しつつ有った最後の犬神が悲鳴すら上げる事もなく切り伏せられた。
 ヤツ自身は背後に視線を動かす事もなく。更に言うと、その一瞬の後には身体に受けた傷も、最初から何もなかったかの如く跡形もなく消え去っている。

 そして、その名残のように僅かに残された空中に一本の――。腕の傷から流れ出し、高速の刀の動きに従って作り出されていた黒い断線も今、霧散して消えて仕舞っていた。
 黒い体液。光の加減で黒く見えている訳でないのなら……。

「いや、悪い悪い。まさか、術者を相手に本名を名乗るようなバカが居ると信じて居るヤツが、この世界に存在するとは思わなかったよ」

 相手の正体を探る事に意識の一部を割きながらも、出来るだけ明るい声でそう話し掛ける俺。
 そう。そもそも、魔法使い相手に自分の名前を名乗る危険性を理解しているのなら、真名や忌み名などは間違っても敵に知られないようにするのが基本。これが出来ないヤツは絶対に長生きが出来ない。
 そもそも簡単に本名や、ましてや真名などを名乗ると、素直に真名を支配されて生殺与奪の権を相手に与えて仕舞う結果となるから。

 そうかなり冗談めかして言った後、強い瞳で青年を見据える俺。その瞬間、腕の中のハルヒからかなり緊張したような気が発せられた。
 但し、目の前の青年からはそれまでの雰囲気と変わりはない気しか発せられなかったのだが……。

「ひとつ忠告して置いてやるが、術に関しては素人のお前に、今行おうとしている作業を成功させる事は出来ないぞ」

 成るほど、ハルヒは俺の発した龍気に気が付いたと言う事か。こちらの方は想定通りなので別に問題はない。
 問題は目の前のコイツ。月下に、先ほど抜いた長刀を構えた状態で俺に相対する青年に視線を固定。
 俺の僅かな龍気に気付く事が出来ないほど鈍感なのか、それとも、その程度の気配に動じる存在ではないのか……。
 流石に鈍感と言う可能性は、敵が普通の術者の場合では考えられない。……のだが、ここまでの一連の流れや、ハルケギニアでの経験から考えると、その可能性をどうにも否定出来ないのだが……。

 不意打ち……は俺に対しては意味がない。物理、魔法どちらも一撃は無効化が可能。そして初太刀をカウンターで返され、
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