第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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ツ、最初に自殺した人物、蘇芳優さんかと思ったけど、先ほど、そう呼び掛けた際にこの犬神から逃げ回っているヤツが発した雰囲気はその可能性を否定する気配しか発せなかったので……。
もっとも、コイツの名前など今はどうでも良い事か。
その無様な様子を呆れたような、非常に冷たい視線で見つめ続ける俺。
矢張り……。
もうこのまま――バカは捨て置いたままで帰っても良いかな、などと疲れた者の思考でそう考え始めた俺。流石に、本当にそんな真似が出来るとは思えませんが、それでも、それぐらいアホらしい事件に巻き込まれた、と言う事。
それに、現在の状況から考えると、最悪、弓月さんの関係者を冬至の間中、守り切れば良いだけ、の可能性が高いと思いますから。
細かな状況が未だ分かってはいないので、絶対にそうか、と問われると、流石に自信はない仮説しか立てられていないのですがね。
ただ――
「ねぇ――」
表面上に出て来る敵は素人同然の連中。しかし、その後ろに隠れているのは地球世界の歴史に名を残す強力な邪神の類。ハルケギニアに召喚されてから何度も経験させられたこの手の事件に、既に食傷気味の俺。
正直に言うと、今、行おうとしている小細工が本当に必要なのか、などと考え始めた……と言う事。その腕の中から、かなりの疑問に染まった彼女の問い掛け。
そして、
「アイツは何で自分の呼び出した魔物に襲われているの?」
かなり初歩的な内容の疑問を問い掛けて来るハルヒ。まぁ、状況が妙にコメディ染みて来たので、俺の方に質問に答えるぐらいの余裕があると見て取ったのでしょう。それに、確かにこっち側の人間――魔法の世界に身を置く人間以外には、この状況は謎すぎるでしょう。
いや、ハルヒに関して言うのならおぼろげながら理由は分かっていたとしても、それを完全に理解する事は出来ない可能性はある。
「これは所謂、人を呪わば穴二つ……と言う状況やな」
相変わらず冷ややかな視線で、自らの召喚した魔物から逃げ回る青年を見つめながら話し始める俺。
そう。あいつが召喚したのは他者を呪い殺す為の魔物犬神。
その犬神を召喚して命令したのは良いが、その命令が実行不可能な内容だった為に、
「呪いを実行しようとした人物にその呪いがすべて返された、と言う状況かな」
俺の式神たちには考えられない状態ですが、真名やその他の方法で無理矢理縛った使役獣などの場合は往々にして起きる事態。
何にしても、式神使いに分類される術者として、これでは無様としか言い様のない状態なのですが……。
自らの召喚した犬神に追われながら、しかし、背中に背負った日本刀を引き抜く青年。刹那、刀身が一メートルを超えるような長刀に冷たい月の光が反射した。
そして―
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