第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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配する世界にまで辿り着いた青年がそう口にする。確かに正論。ただ、青年自身の口調の中に不快感のような物はなし。
但し、その青年の様子にはかなり大きな違和感。
確かに山中から行き成り現われたヒップホップ系。スニーカーもその系統の連中が履く、派手な赤いスニーカーを履いて居たのだが……。
違和感その一。背中に背負った刀。服装や雰囲気からするとこの手の連中が持つアイテムはスケボーやデカいラジカセなどが似合うと思うのだが、ヤツの灰色のスエットの肩口から見えて居るのは日本刀の柄と思われる黒い筒状の物体。
そして、何より大きな違和感は……。
五体満足の状態で立つ青年を二度、上から下まで見直す俺。いや、これほど大きな疑問は一度確認しただけで十分なのだが……。
そう、先ほど斬り跳ばしたはずの左腕が、何の問題もなく再生している。
これはかなり上位の吸血鬼クラスの回復力を持った存在だと考える方が妥当か……。
「成るほど。俺の名前は仙童寅吉と言うんや。まぁ、名は体を表す、と言うのがしっくり来る名前やと思うけど、どうかな」
普段から当然、関西風のイントネーションで話すので、この辺りは問題ない。正にネイティブ・スピーカーの発音と言うヤツであっただろう。
魔法関係では明らかに素人臭いヤツにしては妙に高い能力を有して居る事に、かなり疲れにも似た感情を抱きながらも、表面上はそんな様子を一切見せる事なく答える俺。
この状況は、おそらくハルケギニアの時と同じ流れ。どっかのバカが分不相応な能力を素人に与え――修行の成果などと言う理由ではなく、望んだから与えた、と言う非常にお手軽な方法で能力を与えて、その与えられた能力を使って、その素人が破滅への道をひた走って行く様を神の視点から見つめて居る。
ありとあらゆるモノを嘲笑するかのような薄ら笑いを浮かべながら。
そう言うクダラナイ話の相手側として俺が配置された、そう言う事なのでしょう。
尚、俺の答えを聞いたハルヒからは当然のように疑問符が発生したのですが、それでもその疑問を口にする事はなく、彼女の視線は自らを攫おうとした青年に固定したまま。
どう考えても友好的と言う言葉とは正反対の眼つきであった事は間違いない。
俺の答えを聞いた青年の目深にかぶったフードから覗く口元に僅かな笑みが浮かんだ。その瞬間確信する。コイツは間違いなく魔法に関しては素人だと。
そして、
「現われろ、犬神ども。俺の敵、仙童寅吉を倒せ!」
右腕を大きく一閃。その刹那、大地より現われた犬の首だけの化け物数体が――
「――って、お、おい、何で俺に噛みつくんだ、この馬鹿犬どもが!」
しかし、何故かその場を転げ周りながら自らの呼び出した犬神たちから逃げ回る青年。コイ
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