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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第127話 奪還。しかし……
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 冬に相応しい冷たく凍えた大気。氷空の中心には完全に合一したふたりの女神()が、その冴えた美貌で地上に微笑み掛け、彼女らの周囲を取り巻く星々は、まるで銀砂の如き輝きを発して居た。
 そんな蒼い光の支配する世界の中心を、ゆっくりと降下して行くふたり。

 準備をしていた俺は未だしも、完全に就寝状態だったはずのハルヒが出かける準備などしている訳もなく、普段、長い髪の毛を纏めているカチューシャも存在せず、身に付けているのは旅館に備え付けられた浴衣のみ、と言う、何と言うか妙に扇情的な出で立ちであったのは間違いない。
 少なくとも俺が彼女を解放すれば、朝には風邪を引いているのは間違いないでしょう。

 ふたりの会話が途絶えた時、自分の姿を思い出した彼女が、俺に気付かれないように乱れていた胸元をそっと直した。
 その瞬間。無防備な胸元に光る銀をその意外に小さな、しかし、とても綺麗な手で隠した。

 ……と言うか、首にしっかりと回されていた腕の片方を放した段階で、気付かれない内に、と言う事はかなり難しいとは思いますが。
 思わず口元に浮かぶ笑み。そもそも、俺は彼女の隠そうとしたソレを目印に追い掛けて来た。故に、いくら隠そうとも、彼女が俺の渡した首飾りをちゃんと身に付けているのは分かっているのですが。

「まったく、土ごと空中に放り出されるとは思わなかったよ」

 上昇した時の百分の一ほどのスピードで大地……左右に広がる舗装された道路の端……歩道の中心へと降り立つ俺。その瞬間、まったく手入れのされていない森の奥から掛けられる若い男の声。
 聞き覚えはない声。もっとも、こんな真冬の東北の山中で知り合いに出会うとも思えないので、この辺りに付いては当然と言えば当然。口調は割りと普通の若い男性の話し方。更に言うと、陰鬱な感じもせず、学校に行けばクラスメイトの中に一人ぐらいは存在して居るであろう、……と言う男子生徒の中では比較的話し掛け易い相手、と言う感じか。
 もっとも、最近に遭遇した同様の存在。妙に馴れ馴れしい感じの這い寄る混沌や、少し理屈っぽい雰囲気を感じた名付けざられし者と比べると、話し掛け易い相手と言う話なのですが。

 矢張りあの程度の高さから落ちたぐらいでの無力化は無理だったか。
 それならこんな戦い難い場所。歩行者としては正しいが、動きが制限される歩道などではなく、道路の中心に移動すべきか。
 ハルヒを抱いたまま、その場で身体を解すように二度三度ジャンプを行い、そして大きく息を吸い込む。冷たい大気を身体へと取り込み気を活性化。
 そして、ゆっくりと吐き出した俺。

 声のした方向……。枯れた下草をかき分けながら現われた青年。道路を照らす照明の明かりが届くギリギリの範囲。明るすぎる月の光は大きく張り出した木々の枝によって
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