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第一章
忘れられなければならない話
五十嵐圭祐の趣味は旅行だ。今回は東欧を旅していた。
東欧の国の一つであるブルガリアまで来て。彼は能天気に言った。
「じゃあヨーグルトでも食うか」
こんな調子だった。それで能天気なままある村に来た。本当に何も考えていなかった。黒い髪を立たせて太めでやや短い眉は上を向いている。そして目も威勢のいい感じだ。身体は細めでそれでいて筋肉質である。背はスラブ人の中にあっても小柄とは思われないものがある。一八〇ある。
彼はその村に明るい顔で入って。まずはこう尋ねた。
「ヨーグルトありますか?」
「んっ、ヨーグルトかい?」
「それを聞いてくるってことはあんた」
村人達は彼のその言葉を聞いてすぐにわかった。たどたどしい如何にも覚えたてというブルガリア語も村人達に彼が誰かを教えていた。
「日本人だな」
「そうだよな」
「ああ、わかるんですか」
「わかるよ」
「ヨーグルトってだけでね」
こう彼に返してきたのだった。見れば日本人には慣れている感じである。
「すぐにわかったさ」
「それでヨーグルトを食べたいんだな」
「ええ、そうです」
まさにその通りだと答える彼だった。
「それでありますよね」
「ヨーグルト以外もあるよ」
「それもたおおうりとね」
村人達は気さくにわたっれこう言うのであった。
「さあ、何が食べたいんだい?」
「何でも言ってくれ」
「何でもって言われると」
少し困ってしまう圭祐だった。実はヨーグルト以外は殆ど考えていなかったのである。この辺りは実にいい加減というかまさに能天気な彼であった。
「まあまずはヨーグルトのスープだな」
「タラトルな」
「タラトル?」
実はこの村に来るまではそうした庶民的なブルガリア料理を食べていない彼だった。適当にパンや牛乳で過ごしてきたのである。
「ヨーグルトスープのですか」
「そうさ。大蒜や胡瓜を入れたな」
「それはどうだい?」
「俺に食べさせてくれるんですか」
「安いよ」
「それで美味いよ」
村人達は笑って彼に言ってきた。村は素朴に牛達を使って昔ながらの農業をしている。村人達は鍬を持って耕していたり家事をしたりしている。そして子供達が質素な家と家の周りを走り回っている。こうした風景はおおよそブルガリアの何処でも見られるものだった。
「どうだい?他にもあるし」
「何度も言うけれど安いよ」
このことを強調して言ってきた村人だった。
「どうだい?」
「お金は取るんですね」
「こっちにも生活があるからね」
しかしその返事は気さくな笑みと共であった。
「だからね。どうだい?」
「わかりました。それじゃあですね」
そして彼もそれに頷くことにしたのだっ
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