5部分:第五章
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た」
こうして四人はその田畑を売らないことにした。その旨はすぐに業者にも伝えたのだった。
「そうですか。売りませんか」
「すいません、話が変わりまして」
「それで」
四人はこうその業者であるあのスーツの男に告げていた。今彼等は家の外の田畑の傍にいてそれを見ながら話をしていた。
「申し訳ありませんが」
「それで宜しいでしょうか」
「ええ、私は構いませんよ」
業者はにこりと笑って彼等に答えるのだった。
「むしろですね」
「むしろ?」
「売らないと御聞きしてほっとしています」
こう彼等に話すのであった。
「それで」
「売らないで、ですか」
「ですがそれが貴方のお仕事では」
「それはそうですけれどね」
このことは認識しているという言葉であった。だがそこにはプラスアルファもあった。
「ですがこれだけの見事な田畑を潰すというのもこれまた」
「勿体ないというのですね」
「その通りです。だからです」
業者は言うのだった。
「潰さなくて済んでほっとしているのですよ」
「そうだったんですか」
「それでですか」
「ええ。本当に立派ですね」
あらためてその田畑を見回しての言葉だった。
「大事にして下さいね」
「あっ、はい」
「わかりました」
彼等は業者の今の言葉に気付いたような顔で頷いた。
「それじゃあこれからは」
「この田畑を」
「そうして下さい。貴方達のお父さんは素晴らしいものを残されましたね」
業者の顔はさらににこりとしたものになっている。
「是非。このまま残されて下さいね」
「ええ。それじゃあ」
「そのように」
四人は彼の言葉にまた頷いた。これで話は終わりだった。賢作の田畑は残され四人は何とかこの田畑を残し耕し続けた。それから泥田坊が姿を現わすことはなくなった。おそらく田畑が残って安心したのだろう。少なくともこの田畑は残ったのであった。
泥田坊 完
2009・8・23
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