4部分:第四章
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第四章
「田畑の方から聞こえてきてるよな」
「ああ、親父の声な」
「確かにね」
また言い合うことだけしかできなかった。
「どうする?それじゃあ」
「外に出るっていうのか?」
「まさか確かめるの?」
「誰がいるのか」
「確かめないと駄目だろ」
長男が言った。
「あれは親父の声だぞ。間違いない」
「けれどよ。親父は死んだじゃないかよ」
次男がそれに言い返す。
「それで何で外からよ」
「けれどあの声は間違いないわ」
「そうよ。お父さんのよ」
長女と次女はそれぞれこう言った。
「あの声。聞き間違えようがないわよ」
「絶対にそうよ」
「だからだ。言ってみるんだ」
長男はあらためて弟と妹達に告げた。
「そして確かめるんだ。いいな」
「幽霊かも知れないのにか」
「出てるのかも知れないのに?」
「だから幽霊かどうか確かめるんだよ」
長男の言葉は強いものになった。
「いいな。行くぞ」
「わかったよ。それじゃあよ」
「行けばいいんでしょ、行けば」
こうして兄弟全員で外に出ることにした。めいめい懐中電灯を手にその光を頼りに田畑の方に向かう。そこは暗く月も星もない。まさに電灯だけが頼りだった。
声も今は聞こえない。急に聞こえなくなった。だが彼等はこのことにかえって不気味さを覚えているのだった。安心してはいなかった。
「いない?」
「誰もいないわ」
「田んぼにも畑にも」
辺りを電灯の光で照らしながら言うのだった。
「何処にもな」
「いないわよ」
「いや、安心するな」
だが長男は警戒する声で弟や妹達に告げた。
「御前達も声は聞いてるな」
「ああ」
「それはそうだけれど」
「じゃあ安心するな」
あくまでこう言うのだった。
「絶対にな」
「けれど何も見えないぜ」
「声も止んだし」
「いや、絶対にいる」
長男の言葉は確信のものだった。
「絶対にな」
「いるって言ってもよ」
「何処なのよ」
「そうよ、何処にいるのよ」
何がいるのかさえわからない。その恐怖の中にいた。ここでその彼等の後ろからだった。またあの声が聞こえてきたのであった。
「売るな」
「!?」
「後ろから!?」
すぐ後ろからその声を聞いてだった。
「聞こえたぞ、おい」
「あ、ああ」
「まさか・・・・・・」
そう思い後ろを振り向いた。その時だった。
「売るな!」
声は賢作の声だった。だがその姿は黒く不気味なものだった。
泥だった。泥でできた人間だった。その目は片方がなくしかも指が三本しかない。その異形の化け物が今賢作の声を出してきたのだ。
「売るな!」
「な、何だこいつは!」
「化け物!」
その姿を見て慌てて逃げ出す一同だった。そうしてその日はそのまま
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