言の葉の不足分
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いのだ。
分かり易く、簡潔に相手の非を言い当てなければならないこういった場では、単純に心の底から疑問をぶつけられる鈴々の方が有能だった。
見れば孟獲は少し驚いた表情で自分と大差ない身長の鈴々を見つめていた。む、と数瞬の後に眉を寄せて腕を組む。
「美以達の縄張りに勝手に入るから悪いのにゃ」
「だって入らないと話すことも出来ないのだ。お使いに向かった人も追い返されたなら鈴々達が直接来るしかないのだ」
「お前らと話すことなんてないじょ!」
「鈴々達はあるのだ!」
「お前らの都合なんて知らないにゃ! 聞く気もにゃい!」
「勝手に言うからいいもん! 偶に来て畑を荒らしたりするから村の人達が困ってるって聞いたのだ! 荒らすのはやめてって言いに来たのだ!」
「そんなことしてない! 美以達は森から出たりしてないのにゃ!」
「嘘なのだ! だって村の人が言ってたのだ! 毎年野菜が無くなるって! 変な足跡がついてたから南蛮以外は有り得ないって! 動物の姿も見ないなんて変なのだ! 鈴々の住んでた村だって動物に荒らされたことあるけど誰かは荒らしてるとこを見たことあったのだ!」
「うにゃぁぁぁ! してないったらしてないにゃ! 嘘つきはお前らなのにゃ!」
「ぜーったい嘘なのだ! お前達は泥棒なのだ! お兄ちゃんも嘘つきは泥棒の始まりって言って……っ……」
次第に熱が籠ってきた子供の言い合いの最中、不意にぽろりと出た言葉で鈴々が止まる。
完全な無意識で口から零れた。下唇を噛んで何かを堪えた彼女は、キッと孟獲を睨んだ。
「考えてもみるのだ! 自分で獲った獲物を横取りされるのと同じなのだ! モノを盗るのは悪いことで、お前達が悪いのだ。でも悪くてもお前達にも理由があるかも知れないってお姉ちゃんが言ってたからそれを聞きにきたのだ!」
「知らない事で難癖付けられるなんて思っても見なかったのにゃ! どうせお前ら外の連中が美以達を悪モノにする為にでっち上げた嘘なのにゃ! ぜーったい嘘つきはお前らだじょ!」
ぐぬぬ、と互いに睨み合う少女二人。間で話を聞いていた愛紗と星は疑問ばかりが頭に浮かぶ。
特に先程、鈴々が一瞬見せた逡巡は星の頭を冴えさせた。
「……孟獲殿、つかぬことをお聞きするが……あなたがしていなくとも他の者がしていたということはないので?」
「お前っ……ミケやシャムやトラがそんな意地汚いことするっていいたいのか!?」
激昂。怒りの炎の向く先は星に走った。射殺さんばかりの視線は殺気に彩られ、仲間を侮辱されたことを心から怒っていた。
しかしながら星は動じない。真実を知る為には誰かが疑問点を突っ込まなければならない。
「いや、三人だけとは限りますまい。我らであっても盗賊に身を落とすものが居る始末。それともなん
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