言の葉の不足分
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男共を叩きのめしたなどと、誰が信じてくれようか」
喉を鳴らして合点がいったと頷く彼女は楽しそうに独り言を呟き、愛紗の肩をぽんと叩いた。
「ふふ、彼が居なくて良かった。戦うどころかこれを見たらこの地に永住されてしまう。おっと……そう考えると真逆に位置する幽州に辿り着いたのは、天も彼の幼女趣味の矯正を望んでいるということに違いない」
「こんな時に冗談を……」
「お主はどうかな、愛紗。彼とは違いこ奴等と戦える、そうだろう?」
言われて躊躇いに気付く。目の前に現れた敵を敵として認識していないことに、星から言われて初めて気付いた。
見た目が幼いから戦わない……そんな選択肢があろうか。
いくら愛らしい見た目だとしても、武器をもって襲い掛かってくる相手に武器を向けないことなど出来ない。自分達は武人であり、戦人なのだ。此処が戦場というのなら、敵対するモノとは正しく“コロシアイ”をするのが道理。
選別しろ、と甘い声が囁いた気がした。
星は先ほど、彼は戦わないと匂わせたが……愛紗の中では違う。
いくら彼を惑わすような幼い体躯であろうとも、目的の邪魔をする相手を手に掛けないなど……“あの黒麒麟”がするはずも無い。
戦わなければ仲間が死ぬ。
戦わなければ友が死ぬ。
戦わなければ部下が死ぬ。
戦わなければ理想が遠のく。
戦わなければ……死した誰かに顔向け出来ない。
からからと声を上げ、乾いた笑みを浮かべ、瞳を絶望に歪ませて……その男は少女達を殺すだろう。
星には想像出来なくとも、愛紗には彼のそういった姿を想像するのは容易かった。
引き攣るような胸の痛みが走った。されども無理矢理に抑え付けた。
自分はどうだ。ああ……戦をするのなら殺そう、と。
同時に、此処で間違えてはいけない。
自分達が行うのはヒトゴロシでは無いのだ。殴りに来たのではないのだ。まずは何をするか、過ってはならない。
きっと彼でもこうするはず。優しい彼なら……戦う前に確かめ、戦わずに済む方法を必死に探すはず。問答無用で殴ると言ってから殴るような、曹操と同類なわけがない……と。
ぐ、と唇を引き結んだ愛紗は代表と思われる猫耳の少女の目を射抜いた。
「お初にお目に掛かる。南蛮大王、孟獲殿とお見受けする。我が名は関羽、関雲長。益州牧より和睦の使者としてこの地に参った次第に」
「鈴々は張飛、劉玄徳が一の家臣、張翼徳なのだ。南蛮の皆と仲良くする為に此処に来たのだ」
武器を仕舞い、拳を包む。ぺこりと頭を下げた彼女に驚いたのは孟獲だけならず、味方の兵士達に至るまで全ての者達だった。
合わせた鈴々は既に武器と両手を頭の後ろに持って行き、八重歯を見せて年相応の笑顔を見せていた。
いきなり一撃を見舞われた
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