三話:魔導士殺しのエミヤ
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るのかい」
見ていられなくなりグレアムは語尾を強めて切嗣の言葉を遮る。
だが切嗣は相も変らぬ無表情で事務的な会話を返すだけである。
しかし、グレアムには切嗣がわざと事務的な話に終始しはやて個人の話を避けているのが分かった。
「いや、はやて君の様子はどうなのかね」
「家を出る前に盗聴器をしかけてきた。それにロッテが監視についている。何があってもすぐに対処は可能だ、心配はいらない」
「私がそういったことを聞いているのではないことぐらい君だって分かっているだろう?」
少し咎めるように告げるグレアムに切嗣は目を逸らす。
しばらくの間沈黙が続いていたがこのままでは埒が明かないと判断したグレアムが折れる。
紅茶を一口口に含みのどを潤してから事務的な話を切り出す。
「……頼まれていたものは持ってきておいた。後で確認しておいてくれ」
「分かった。それでデュランダルの出来は?」
「威力としては申し分ない。タイミングさえ間違わなければ封印は可能だろう」
「そうか、後はアリアとロッテの腕次第というわけだね」
主と共に闇の書の永久凍結。無限転生という非常に厄介な機能を持つ闇の書への最終手段。
今まさに切嗣達が進めている作戦がそれだ。
そのために強力な氷結魔法に特化したデバイス、デュランダルをグレアムは制作した。
準備は整っている。後はヴォルケンリッター達の蒐集を待つだけなのである。
「そうなってくると問題は管理局に嗅ぎつけられるかどうかになってくるね」
「まさかこの立場になって身内から見つかるのを恐れるようになるとは思ってもいなかったよ」
「間違っても最終段階までばれないようにしてくれ。あなたがいないと計画に失敗した場合の対処ができない」
「肝に銘じているよ。……犠牲を無駄にするわけにはいかないからね」
グレアムは十一年前の事件を思い出す。あの事件で自らの意思で部下を殺した。
何年経っても後悔はなくならず傷口は決して塞がらない。
あの状況でグレアムは客観的に見れば闇の書を止め世界を危機から救ってみせた。
まさに正義の味方だ。だが……どれだけ繕ったところでやったことは殺しだ。
正義に酔いしれられる程彼は人間をやめていない。
ならば……自分よりも遥かに若い年齢の頃から正義を行ってきた目の前に居る男はどんな感情を抱いているのだろうか?
正義に酔いしれている? そんなはずがない。
正義に酔いしれた者はあのような死んだ目をしていない。
何より彼は知っている。全てを救おうとした結果、全てを救えなかった男の絶望の涙を。
「君と会ってからもう何年も経ったが……君は変わらない」
「当然だ。人の本質というものは変わらない。魔
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