3部分:第三章
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第三章
「閉鎖的な社会、そう」
彼は言葉を続けた。
「全体主義国家がありますね。カルト教団もそうですが」
「ああした異様な社会ですか」
「そう、そうした異様な社会においてです」
彼は述べていく。
「こうしたことが起こります。同じ様な人間が集まっていると自然に異分子を探すようになるのです」
「異分子を」
「実際のところ異分子かどうかはどうでもいいのです」
こう言うのだった。強張った顔と声で。
「異分子でなくともそれが異分子となります」
「群集心理がそれを助長するのですね」
「そうです。誰かが異分子だと言えば」
「それだけで異分子になると」
「その通りです。実際に異分子かどうかはどうでもいいのです」
「どうでもですか」
どの教師達も暗鬱な顔でその話を聞いていた。聞くだけで何か恐ろしいものを味わっていた。そしてそれから逃れられなかった。
「そう、どうでもです。重要なのは敵がいることなのです」
「敵が」
「簡単に言うと組織を守る為の敵です」
そう言われた。
「組織を守り維持する為には敵が必要です」
「閉鎖的な社会においてはですね」
「より閉鎖的であればある程」
「まさにカルトですね」
「しかし何故」
ここで教師の一人から疑問の言葉が出て来た。
「何か」
「何故こんなことになったのでしょう」
はじまりからして奇妙だった。それに関して言及されるのも当然の流れであった。
「どうしてまた。こんなことに」
「それについてはです」
「はい」
教頭はそれについても話す。教師達はそれも聞くのだった。
「どうやらはじまりは些細なものです」
「些細なものですか」
「はい、誰かが言ったのです」
「誰か!?」
「誰かまではわかりません。そしてそれは重要ではないのです」
奇妙な言葉だった。はじまりが誰かはどうでもいいというのだから。しかしそれでも彼は話すのであった。その強張り暗鬱なものになった顔で。
「重要なのはこうしたことがはじまりになったということです。そしてそれは」
「それは」
「おかしいという言葉が出たことです」
「おかしい!?」
「そうです、おかしいです」
この言葉を繰り返して述べた。
「その言葉が全てのはじまりでした」
「はじまりはそれか」
「誰が言ったのか。やはりそれは」
「わからない、というわけか」
「はい、おそらくは誰かがふと言った言葉です」
こう述べられる。
「それが全てのはじまりで」
「馬鹿な、そんなことでこんなことになるなんて」
「有り得ない、異常だ」
そこにいる者全てが有り得ないと言った。彼等にとってはおよそ考えられないことである。というよりは狐につままれたようにしか聞こえないのが実情であった。
「そもそも何がおかしい」
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