暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
訳知り顔で夕焼けを
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闇が忍び寄ってきたオレンジ色の世界の中、今一度連続した光が明滅するのを視界の端で確認しながら、男はくつくつと嗤った。

脳裏によみがえるのは、予選決勝にて当たった一人の少女の姿だ。

―――絶剣……お前、が、堕ち、る姿、を、見れない、のは…少し、残念だ。

誰よりも強く、誰よりも弱い少女にザザは思いをはせ、しかしその数瞬後にスコープの十字照準線(クロスヘア)の中に動いた影を見て即座に意識を戻す。

巨大な円形建築物――――中央スタジアムに隣接する市街エリアだ。崩壊し、ひび割れた壁面の向こう側で確かに何かが動いた。

そう確信し、待つこと数秒、再び角の向こうから出た顔にザザは引き締めていた口角がもう一度緩むのを止められなかった。

美しい少女だ、ペールブルーの髪を左右で束ね、その奥にある眼差しはどこか近寄りがたい氷で造られたダガーの切っ先を連想させる。どこかの国の世間知らずな姫、というより野に放たれた山猫を幻視させられた。

ビンゴ、と。

唇が小さく呟くのを他人事のように聞きながら、男は静かに少女の動向を観察した。

どうやら彼女はスタジアムに道路を挟んで隣接する建物に入ろうとしているようだ。市街地エリアに存在する建築物には入れるものと入れないものがあるが、入れる場合は必ず判りやすい出入口が設置されている。

少女が入ろうとしているであろう、スタジアムから広い環状路を挟んで南西に面するビルも、壁面が大きく崩れていた。

「………………」

もはや躊躇はなかった。いや、最初からないのかもしれない。

銃床(ストック)につけていた頬をより一層押し付け、ボルトハンドルを引き、次弾を装填した愛銃のトリガーに指を掛けた。

同時、十字のレティクルの先に薄緑色の《着弾予測円》が表示され、それは心音に合わせて極小のドットからスコープいっぱいに広がる拡縮運動を見せ始める。

通常ならば、予測円が射手側に表示されたと同時に、被弾側の視界には警告色である赤色の輝線――――《弾道予測線》が表示されるはずだが、狙撃手クラスだけは初撃に限定して、予測線の非表示権限がある。その証拠に、レティクルの中で警戒するように左右を見回す少女に気付いた様子は見受けられない。

ああ、この瞬間だけは実にいいものだ、と男は仮面の下でただ思う。

獲物に気付かれることなく、音もなく狩る。

無知な子羊を、理不尽とも言える暴力で弄ぶこの快感。

ノーリスクハイリターン。

それは狩人ならば完璧とまで言える、完成形ではないだろうか。

―――だが、とはいえ。

殺しては意味がない。それでは《死銃》の意味がない。

にやり、と嗤う。

そう、これは狩りではない。言うなればそう。

処刑だ。

嗜虐心から欠片
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