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おかしい
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第一章

                   おかしい
 誰かが言い出した。その誰かはもうわからない。
「何かおかしくないか?」
 全てのはじまりはこの言葉だった。
「おかしい!?」
「このクラスおかしいだろ」
 誰が言ったのかは本当にわからない。しかしこうした言葉が出たのは事実だった。
「おかしいって絶対」
「どうおかしいんだ?」
「口では言えないさ」
 しかし返答はこうだった。
「それでも。何かおかしいんだ」
「おかしいか」
「おかしい、絶対におかしい」
 普通にこう言われだした。やがてそれは全員に広がり誰もが何かおかしいと感じるようになった。しかし何処がどうおかしいかというと誰にもわからなかったのだ。
「何かが完全におかしいんだ」
「そうだよな。このクラスおかしいって」
「変だよ、絶対」
 皆集まれば顔を顰めさせてこう話す。しかしそれでもやはり何がおかしいのかわからない。どうしてもそれがわからないでいたのだ。
「何かいるし」
「そうそう、何かいるよ」
 こうも言われる。
「変なのがいるよ」
「先生気付かないのかな」
 やがてそれは担任への不信につながっていった。
「気付いていないんじゃないの?」
「先生鈍いから」
 また誰かが不意にこう言ってそれが定着した。
「先生全然わかってないって、クラスのこと」
「全然見ていないから」
 すぐにこういうことになってしまった。
「こんなにおかしいのにね」
「わかるのは僕達だけだね」
「そう、僕達だけ」 
 やはり自然にこういうことになったのだった。
「わかっていないよ、何もかも」
「校長先生もお父さんもお母さんもね」
「わかっているのは僕達だけなんだ」
 完全にそういうことになってしまった。こうなるともうクラスは完全に彼等だけの世界になってしまった。もう担任も何もできなくなっていた。
「おかしいのよ」
 これはその担任の先生もわかっていた。職員室で同僚に対して話していた。
「最近私のクラスが」
「おかしいの?」
「ええ。確実におかしいわ」
 その中性的なボーイッシュと言っていい顔を曇らせて述べる。
「皆が皆おかしいって言って私を遠ざけるようになって」
「おかしいっていうと」
「それがどうおかしいのかわからないのよ。見たところ何もおかしなところはないわ」
 先生から見ればそうなのだった。
「何もね。ただ」
「生徒達だけがおかしい」
「そういうこと。完全に何が何かわからないわ」
 たまりかねたような言葉だった。
「おかしいのはそれ。生徒達が生徒達で固まっていて」
「どう見ても何かありますね」
「ええ。けれどそれが何かわからない」
 同僚の言葉に対して応える。
「だから私も何をどうしていいのかわからな
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