月下に咲く薔薇 14.
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「次元獣か!?」
クロウは、身の引き締まる思いで左手に拳を握った。
インペリウム帝国の方が先に動いたのだ。
尤も、いきなりZEXISの拠点に次元獣を投入するところまで想定していた訳ではない。もし、これがアイムの言っていた「邪魔」ならば、搦め手で人を追い詰める手法から突然転換した事になる。
誰の邪魔を、どう行いたいのか。つくづく腹の立つ事をしてくれる。
「受けて立ってやるぜ。アイム!」
勢いのまま屋外を目指そうとして、全員が瞬時に硬直した。自分の機体が何処にあるのか、を思い出したからだ。
「おい、ちょっと待て!」ロックオンが左の目尻を歪め、突きつけられた現実に愕然とする。「俺達は、何処を通って母艦にまで行けばいいんだ?」
「私は、マクロスクォーターまで走るぞ! 他にないではないか」
意気込みを全身から溢れさせ、クランがさっと外を指した。
「いや、それはまずいでしょ」
ミシェルが速攻で、彼女の案をばっさりと斬り捨てる。
確かに、彼の指摘は正しい。
マクロスクォーターやトレミーなどZEXISの母艦が待機している場所は、次元獣の出現が想定されている滑走路と同じ地上だ。どんな名パイロットも、ノーマルスーツの下は生身の人間。破壊力の大きな攻撃どころか、最小サイズの次元獣ダモンによる尾の一振りでも五体はばらばらに千切れてしまう。
「私達が引きつけている間に、移動を!」
言うが早いか、1人階下に消えて行ったのはミカだった。幾つかの単語を削ぎ落とした物言いは、次元獣出現までの時間を惜しんだ彼女なりの機転なのだろう。
おそらくは、タケルも早い時点でガイヤーを呼ぶ。
「っくそう!」
焦燥感に突き動かされ、ロックオンが思わず壁面を拳で叩いた。
直後、耳慣れた異音を聞きつける。大きな鳴き声が周囲に轟き、壁が大きく振動した。もし、この一帯が民家の集落ならば、今の一声で全ての家屋のガラスは悉く粉砕されている。
ZEXISのパイロットならば知らぬ者はいない、次元獣の雄叫びだ。
「今度はしっかりと出て来やがったか!」
クロウも歯痒さから、激しく虚空を睨む。ショッピング・モールの時とは違い、次元の歪みは次元獣たちを正常にこの空間へと吐き出したようだ。
しかも、おそらく声の主はライノダモン。アイムのいつものやり方なら、他にも4〜5頭は出現すると思われる。
よもやその出現時に、世界初の次元獣バスターが不本意な屋内待機とは。出るに出られぬパイロット達の分まで、基地の主であるクラッシャー隊が背負ってしまった。
戦力差は想像に難くない。どうする?
ロックオンとミシェルの携帯端末が、同時に鳴った。
やりとりを始める2人の会話に、クロウとクラン、そして隼人が聞き耳を立てる。
「ライノダモンが1にブルダモンが4!?
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