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戦国異伝
第二百二十七話 荒木謀反その九

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「別に」
「やはり十二郎殿だけはある」
「兵の配は見事です」
「わかっておられる」
「見事なまでに」
「だからこそ上様も重く用いられておった」
 摂津の一介の国人からだ、何十万石の大名に取り立てたのだ。これを破格と扱いと言わずしてというのだ。
「とてもな、しかしな」
「それでもですな」
「この度は謀反を起こされた」
「考えれば考える程」
「わからぬ、しかも上様もな」
「何かおかしいですな」
「妙じゃな」
 こう大谷に問うた黒田だった。
「何かな」
「読まれている様な」
「そうしたご様子じゃな」
「一体どういうおつもりなのか」
「わからぬのう」
 こうしたことを話しながらだった、二人は荒木のところに伺った。すると荒木は二人をあっさりと自分の前に呼んだ。
 荒木は青い具足に陣羽織の姿だった、黒田は彼のその姿に驚き思わず言った。
「そのお姿は」
「どうした」
「どうしたもこうしたもありませぬ」
 流石の黒田も驚きを隠せず言う。
「ご謀反は」
「そのことじゃな」
「はい、左様です」
「そうじゃな、それでじゃが」
「それでとは」
「何の用で来た」
 荒木は余裕の笑みで黒田に問うた。
「一体」
「はい、上様からのお言葉ですが」
「何と仰っておられる」
「何と、とは」
 黒田は荒木が信長を敬う言葉であることにも驚いた、しかし。
 荒木は動じない、これには大谷も唖然となっている。勿論荒木の家臣達もだ。だがそれでも荒木の態度はそのままだ。
 その荒木にだ、黒田は言った。
「降れと」
「織田家にじゃな」
「謀反の罪は問わぬと」
「左様か」
「はい、それでそれがしも」
「それがしもです」
 大谷も黒田に言った。
「十二郎殿、ここは」
「謀反をお止め下さい」
「そしてです」
「そのうえで」
「織田家に戻れというのじゃな」
「左様です」
「その通りです」
 まさにとだ、答えた二人だった。
 二人はここで荒木が頷くとは思っていなかった、これからも説得にあたるつもりであった。だがその荒木は。
 頷いてだ、こう言ったのだった。
「官兵衛、それに桂松」
「はい」
「何か」
「御主達これからわしを助けてくれるか」
「助け?」
「助けといいますと」
「本丸は抑えた」
 そこはというのだ。
「城の要所もな、しかし二の丸等は違う」
「お言葉ですが戦には加わりませぬ」
「荒木殿に従うことはしませぬ」
 二人は荒木に眉を顰めさせ答えた。
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