巻ノ十六 千利休その九
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「それはまた随分とのう」
「厄介な問題ですね」
「家は跡継ぎがいなければ滅びる」
ここで言ったのは根津だった。
「どの様な家でも」
「その通りです」
「そのことが収まらねば羽柴家は危ういですな」
「殿にしましても」
穴山は幸村を見て言った。
「そろもろ」
「妻をか」
「はい、迎えられねば」
「そういえばそうした歳か、拙者も」
「早いに越したことはありませぬ」
妻を迎えることはというのだ。
「ですから」
「はい、幸村殿にしましても」
利休は穴山の言葉を受けてだ、彼に顔を向けて言った。
「奥方を迎えられて」
「そのうえで」
「お子をもうけられるべきです」
「そうなりますか」
「このことは羽柴殿だけではありませぬ」
幸村にしてもというのだ。
「よき方を見付けられます様」
「どの様な者がいいでしょうか」
「そうですな、私の見たところです」
幸村の顔相をだ、利休は再び見た。そのうえで彼に言った。
「奥方もです」
「よき方とですか」
「会える様です」
「ならよいのですが」
「殿ならば」
望月も言う、幸村に。
「必ずやです」
「よきおなごをか」
「奥方に迎えられるでしょう」
「ですな、殿はです」
由利も言って来た。
「よき方を奥方に迎えられ」
「そのうえでか」
「よきお子をもうけられます」
「ならよいがな」
「幸村殿は多くの困難を迎えられますが」
それでもとだ、利休はその幸村にまた言った。
「素晴らしき方々を会われ共にあり」
「妻にしても」
「はい、よき方が来られるでしょう」
「ならいいのですが」
「そういえばです」
ここでだ、利休は思い出した様にしてこんなことを言った。
「大谷吉継殿が娘婿を探しておられます」
「大谷吉継殿がですか」
「ご存知でしょうか」
「はい、羽柴殿の家臣のお一人ですな」
「左様です、相当な方でして」
その吉継がというのだ。
「娘婿を探しておられます」
「そうなのですか」
「では」
ここでだ、海野は幸村に言った。
「殿、若しもですが」
「その大谷殿のか」
「はい、娘殿とです」
「そうなるだろうか」
「考えられてはどうでしょうか」
「大谷吉継殿と」
幸村は実際に海野の言葉を受けて深く考える顔になった、そのうえで再び利休に顔を向けてあらためて問うた。
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