第七話「大陸の猛者」
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でさ? ……でね?」
揺れるモノレールの車内で、一方的に喋くっているのは凰のほうだった。俺は、それを適当に聞き流しては、頷いているだけである。
モノレールは、数分後にメガロポリスのエリア2へ到着した。ここは、階級社会で表すなら二番目に治安が行き届き、日本中の富豪共が住み着く豪華な巣だ。ちなみにエリア1は、国会議事堂を中心とした、政府関係者や皇族が住む政治関連の居住施設である。
「エリア1へ行くなら、社会勉強になるぞ?」
「興味ない。とりあえず、エリア14に行ってみない?」
「は、はぁ!? あそこは、日本の中で最も治安の悪すぎる危険エリアだぞ!?」
出入りする連中と言えば、ヤクザかチンピラ、麻薬の売買人ぐらいだ。そんな悪党どもが集うような場所に堂々と「行ってみない?」と尋ねる彼女は、普通ではない!
「そう? アタシの国じゃあ、目の前でシャブやってる奴らとか普通に見かけるわよ?」
――どんな国だよ?
「それに……エリア14って、小さいころ一夏とよく遊んだ場所なのよ? まだ、ISができる前の話なんだけどね?」
「ふぅん……」
「まぁ、無理なら無理で別に構わないけどね?」
「じゃあ……せめてエリア17でいいか?」
あそこなら、最低でも警官がよく歩き回っている場所だ。そこなら、別に普通に男女が歩き回っていても違和感は無いだろう。
「エリア17……? ああ、そこって昔一夏と駄菓子屋へ通った場所じゃん!」
「一夏とは、よく遊んだのか?」
先ほどから一夏に関する話題が出てくる。
「なぁ? 一夏も誘えばよかったんじゃ……」
「行こう!」
と、彼女は俺の手を引っ張って駆け出した。
「ちょ、ちょっと!?」
俺は、そんな彼女に連れられてエリア17へ足を運んだ。
*
「へぇ? ここって全然変わってないね?」
「そりゃそうだ……何せ、白騎士事件が起こってからというもの、いろいろあってこの場所はあの時のまんまなんだからな」
「そう……そうだ、今でもあの駄菓子屋やってるかな? あの優しいお婆ちゃん今でも元気かな?」
「いや……もう死んだよ?」
「えっ?」
「五年前、女尊男卑がエスカレートして、中学に上がったばかりの孫息子が頻繁に女の子たちから虐めをうけるようになってさ? 孫息子は自殺へ追い込まれ、婆さんは孫息子が自殺したことで、孫の後を追うかのように近くの湖へ身を投げた。それ依頼、駄菓子屋は壊されて、今では暴力団の事務所になってるよ?」
「……」
しばらく、彼女は黙ったが、それほど口を閉ざている時間は長くはなかった。
「そう! じゃあ、仕方ないわね? 寂しいけど……」
開き直ったかのように彼女は再び笑顔になった。
「大切な場所が、一つ無くなって残念だったな?」
「別にいいわよ? 大切な場所ってのは、思い出の中に生き続けるっ
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