8部分:第八章
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第八章
「見せたいという気持ちを抑えるのじゃ」
「はい」
陽子はその言葉に頷いた。
「服もな。大人しい服で。よいですな」
「さもないとまた出るんですね」
「幾らでも出る。もうそんなもの出て欲しくはないじゃろ?」
「勿論です、もうこんなものが出る位なら」
「そういうことじゃ。その為にはまず心掛けじゃ」
「心掛け」
「用心しなされよ。さすればよいが」
「それを忘れたらまた出るんですか」
「うむ」
住職さんはここで頷いた。
「宜しいですな」
「わかりました」
そして陽子は深々と頭を下げた。それは感謝の礼であった。
こうして人面痩は消えて二人は住職さんと実家に挨拶をして二人のいる街へと戻って行った。そして車の中であれこれと話をしていた。
「まずは消えてよかったね」
「ええ」
陽子は敦の言葉に頷く。
「まずはね。一安心だったわ」
「けれど。こんな理由だったとは思わなかったよ」
「私が自分の身体を見せたいと思っていたから」
陽子はそう呟いて俯いてしまった。
「あんなものができたなんて」
「まあね。これは俺も驚いたよ」
敦もその言葉には同感だった。何時になく真剣な顔だった。
「そうやって思っていると浮き出てくるものだったのか」
「そうね」
「それで。やっぱりもう派手な服はね」
「わかってるわ」
陽子は心底懲りていた。もう着るつもりはなかった。
「こんなことになる位なら」
「そうだね」
「派手な服も着ないし」
「思いもしないってことだね」
「辛いことだけどね、私にとって」
そしてここで苦笑いを浮かべた。
「このスタイルが自慢なのに」
「けどさ、人に見せなかったらそれはそれでいいじゃない」
「じゃあどうすればいいの?」
「俺にだけ見せてよ」
「敦君にだけ」
「そうさ。それならいいだろ?」
ちらりと陽子に目をやって言う。流石に運転中なので顔を向けることはしなかった。今二人は山の中の高速を進んでいる。回りを車が派手に飛び交っている。
「俺一人にだけ。どうかね」
「ええ、いいわ」
陽子はその言葉に答えた。そしてにこりと微笑んだ。
「敦君にだけね、見せてあげるわ」
「うん」
「私の自慢のプロポーション、それならいいわよね」
「そうだね、派手に露出するんじゃないし他の誰かに見せるんじゃないし」
「それじゃあさ、部屋に着くの明日よね」
「このままいけばね。今渋滞もないし」
「明日帰ってもまだ休み二日もあるのよ」
「それじゃあ」
「その二日。部屋で楽しみましょ。敦君と私だけで」
「いいねえ、それで」
「でしょう?だから」
「よし、飛ばすか」
敦のアクセルを踏む足に力が篭もった。そして派手に飛ばしだす。
「陽子ちゃん、楽しみにしてるからね」
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