第八十七話
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荒廃したスタジアム。《死銃》の持つ狙撃銃の銃口が、俺の頭にピッタリと向けられる。どうあっても外しようがなく、まだ身体は麻痺状態のまま動けない。眼光だけは抵抗するように《死銃》を睨みつけるが、そんな抵抗は無駄どころか無意味ですらない。
「…………」
《死銃》が沈黙したまま引き金に指をかける。《死銃》が先程語っていた、『先に現実で無力感にうなだれていろ』――といった意味の言葉から、《黒星》で撃たれて死ぬことはなさそうだが……あいにく、ここでリタイアすることには変わりはない。
あとはキリトに任せるしかない。そう考えていると、遂に《死銃》が引き金を引き――
「――――ッ!」
――スタジアムの門から凄まじい衝撃の音が鳴り響く。その衝撃とともに、素早く《死銃》は足蹴にしていた俺から飛び退くと、その今までいた場所を一筋の弾丸が駆け抜ける。
「……ショウキ!」
何とか顔だけでも、衝撃音があった方向に向けると、巨大なバギーがこちらに走ってきていた。入場するための門を力付くで吹き飛ばし、スタジアムの中を我が物顔で疾走する。その運転席には……少女のような姿をしたアバターのキリトに、自身の得物であるヘカートを持っているシノン。先程の《死銃》を襲ったが避けられた銃弾は、どうやらシノンが車上から撃ったものであるようだ。
「シノン、運転頼む!」
そのままバギーは《死銃》を牽く勢いで接近し、運転席からキリトが飛び出していく。レーザーブレードを展開し、狙撃銃を背中に担ぎ直した《死銃》へ、素早く斬り込んでいく。
「ふ、ん……」
対する《死銃》はマントの内側から新たなライフルを持ち直すと、襲いかかるキリトにフルオートで斉射していく。だがキリトはそれらを全て斬り払い、レーザーブレードは銃弾をことごとく灰と化していくも、流石の弾幕に接近に苦戦する。
「早く! 乗って!」
その間にキリトと運転を変わったシノンが、バギーを倒れた俺に横付けする。効果時間から大分経ったおかげか、少しは動けるようになったらしく、這いずるようにしてバギーの後部座席に倒れ込む。倒れながら大きく息を吐くと、シノンはそれを確認して再びバギーを走らせる。
「ああ、もう……動かし方なんて知らないのに……!」
ぼやきながらもシノンはスタジアムの出口に反転し、エンジンを全開にして先程破壊したメインゲートにバギーを向ける。《死銃》と戦っていたキリトも、そのライフルを光剣で無効化しながらバックステップし、急速で逃げようとするバギーの荷台に着地する。振り落とされないようにしながら、バギーはスタジアムから脱出しようとし――
――その車体が宙に浮く。
「きゃっ!?」
もちろん車がいきなり空を飛んだとかそういう訳ではなく。車
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