第八十七話
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たいわけ?」
「い、いや。そういう訳じゃない」
そんな思索はシノンからの冷ややかな視線に打ち消されてしまい、耐えられなくなってその視線から目を逸らす。咳払い一つ、ひとまず場の空気を変えると、俺はキリトの方を見る。……その顔は作戦を考えついた顔だ。
「何よりシノンが撃たれないことが一番だ。だから、シノンは残って《死銃》を狙撃してもらう」
「……アンタらは?」
「囮、だ」
「……またか」
キリトから告げられたその作戦に、やはりか、と思いながらも嘆息せざるを得ない。つくづく俺はあのデスゲームの時から――囮というものに縁があるように感じてならない。スカルリーパーの時といい、トンキーの時といい……
「どうする?」
それはそれで自分に出来ることだ、と割り切ることにすると、キリトが端末を展開する。そろそろスタジアムに入って戦いを繰り広げて15分、サテライト・スキャンの結果が端末に表示される。そして今までは、透明化のマントでサテライト・スキャンをやり過ごしていた《死銃》も、遂に衛星の下にその正体を白日の元に晒される。
「……《Sterben》」
その名だけは、この本戦が開始する前から聞いていた。シノンに聞いた、前回の大会に参加していない《死銃》容疑者の一人だった。最初からチェックしていたにもかかわらず、随分と長い長い遠回りをしたものだ、と自嘲する。奴も主街区エリアの端で移動を繰り返している、狙撃ポイントを探しているのだろう。
念のために探してみると、主街区エリアにいるのは俺たちを除けば二人だけ。この本戦が始まって随分時間が経った今、他のプレイヤーの姿も随分と少ない。あと数人と言ったところか。
「……誘ってるわね」
同じ狙撃銃の目線からシノンが呟く。確かに位置を把握されれば、機動型のプレイヤーのいい的でしかないだろう狙撃手が、サテライト・スキャンでおおまかな居場所が割れようとエリアを動く気配がないのは……つまり、そういうことだろう。
そして俺たちは、その誘いに乗るしか選択肢はない。
「これから俺とショウキが真っすぐこの……《ステルベン》を倒しに行く。シノンはそこから奴の正確な位置を探って、狙撃してくれ」
キリトの考えた作戦は単純だ。俺とキリトを《死銃》の――ステルベンの狙撃の囮にし、シノンのその位置を掴ませ狙撃してもらう。しかし、俺たちのどちらかが狙撃されることが前提の作戦に、シノンは少しばかり眉をひそめる。
「囮って……そういうこと? それじゃアンタらは……」
「頼む」
「……分かったわよ」
苦言を呈すシノンにキリトは真摯な一言を返すと、シノンは溜め息混じりに返答を返す。作戦に賛成したという訳ではなく、こうなったキリトに言っても無駄
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