第八十七話
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の隙を無くし、すぐにでもスタジアムから離れていく。
「……こっち」
周囲の警戒をしていたシノンが、小声とハンドサインで俺たちの行く先を示す。シノンの指が向かう場所は、近くにある廃墟のビル――ひとまず、そこで態勢を整えようという提案に、俺とキリトはもちろん同意する。
こうしてスタジアムの崩壊を後目に、俺たちは廃墟のビルへとひとまず身を隠す。……誰かの視線を感じながら。
「キリト、体力は大丈夫か?」
そしてビルの一室に身を潜めながら、俺たちはひとまず息を整えると、まずキリトに気になっていたことを聞く。無論、『疲れたか?』などという意味の質問ではなく、《死銃》にやられた傷の治り具合はどうか、という意味だ。
「ああ、回復してきてる。全快じゃないけど大丈夫だ」
「そうか……ありがとう」
元はといえば、俺があのスタジアムで《死銃》に麻痺弾をくらったのが原因だ。直前にあったサテライト・スキャンの結果から、俺の位置を把握して合流しに来てくれていたのだろう。……そうでなくては、危なかった。
「お礼もいいけど。あんたの方には何があったのか、教えてくれる?」
「……そっちもな」
すっかり協力し合っていたシノンだったが、言われてみれば彼女は《死銃》のことを、ネットの噂程度でしか知らないはずだった。キリトの、現地での協力者の割り出し率とその女性率の高さに内心驚きながら、情報交換をするかのようにお互いに話していく。
出場前に宣戦布告に来たも同然のリーベ。脅されて《死銃》と化していた銃士Xと、彼女が撃たれるまでに話していたこと。突如として現れた本物の《死銃》――そして、俺が疑問に思ったことを数点。そのうち、本物の《死銃》が突如として現れたことについては、先にスタジアムでキリトが切り裂いた、透明化を施すマントの能力だった。
残るは銃士Xが語った『現実の素性が暴かれていて、協力しないと晒されてしまう』という話と、本物の《死銃》が俺に《死銃》の証たる《黒星》を向けなかったこと。銃士Xは何の躊躇もなく黒星で撃ったにもかかわらず、俺を撃とうとしたのは他の狙撃銃だった。さらにその口振りから、その狙撃銃では現実の人間を殺傷出来ないということ……だが、あえて狙撃銃を取った。
「俺たちも偽死銃に遭遇した。……そういう事情だったのか」
キリトは早々とシノンとの協力関係を取りつけることが出来たが、偽死銃との交戦の最中現れた本物の《死銃》にシノンが襲われたため撤退し、今まで身を潜めていたらしい。そして本物の《死銃》がどのプレイヤーが当たりをつけ、バギーで移動していたところを、俺がいるスタジアムに居合わせた、ということだった。
「それでシノンと話し合って、《死銃》がどうやって現実の人間を殺してるか、
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