第八十七話
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くはなく、キリトの斬撃によってその灰マントは断ち切られていた。どうやら、奴が着ていたあの灰マントこそが透明化の正体だったらしく、徐々にその姿が明るみになっていく。
「でやぁぁぁあ!」
裂帛の気合い。さらにキリトの攻撃は続いていく。狙いはあの《死銃》の証――ホルダーに収められた拳銃《黒星》。ただし《死銃》もただでやられる訳ではなく、破壊し尽くされ平らになった観客席を背後に飛ぶ。しかし、その程度でキリトの連撃が止まるわけはなく、キリトはさらに追撃を――
「うっ……!?」
――出来ず、キリトの痛みに呻くような疑問の声がスタジアムに響いた。何があったか弾倉を交換しながら見ると……キリトの身体が、肩口からざっくりと切り裂かれていた。
「アレは……」
レイピアのように鋭く研ぎ澄まされた剣。古来より敵の鎧を貫通する為に作られ、刺突においては右に出るものはいない。キリトの使う光剣と同じ、いやそれ以上に、この銃の世界には似つかわしくない――剣そのもの。
「……エストック」
その剣が《死銃》の手の中にあった。本来なら刺突に特化した武装であるはずだが、使用者の腕前か……斬撃でもキリトに有効打を与えている。そうこうしているうちにも《死銃》の攻撃は続き、エストックによる刺突攻撃がキリトを襲う。
「お前は……!」
キリトは何かを察したかのようにしながら、そのエストックに向けて光剣を振るう。全てをそのエネルギーで持って切り裂く筈の光剣は、エストックの表皮を少しばかり焦がしただけに終わり、キリトの肩にさらなるダメージが加えられる。
あの剣術はこの世界のものではない。ナイフを巧みに操る参加者がいなかった訳ではないが、それとは根本的に違う、キリトを追い込むほどの剣技――!
「どけキリト!」
専門の距離が異なるシノンを庇うように前に出ながら、再装填が終わったAA−12を二人に向けて発射する。両者ともに即座に反応し、キリトは肩を庇いながら、《死銃》はエストックでAA−12の弾丸を切り落としながら、それぞれ後退する。
「どいて!」
背後にいたシノンが俺を押し退けるように前に出ると、後退した《死銃》に対してサブウェポンとして持っていた、手榴弾のピンを引き抜き投げつける。それは《死銃》が肩にかけていたライフルによって撃ち落とされるものの、観客席には再び煙幕のように煙が立ち込める。
「……逃げるぞ!」
その間にダメージを負ったキリトを引きずるようにしながら回収し、俺たちはこの隙に観客席から通路へと離脱する。《死銃》にはもう透明化出来るマントはないはずだが、背後に注意しながら俺たちはどこかに繋がる通路をひた走る。
「悪い、仕留められなかった……」
肩口のダメージに回復錠を使い
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