第八十七話
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の底から爆発が起きたことで車が吹き飛ばされ、乗っていた俺たちは車から空に投げ出された。それは奇しくも、俺が先の対装甲車戦で繰り出した戦術と同じものであり……爆弾ということで、あの踊り子を思わせた。
「ぐっ!」
突如として空に投げ出された俺たちは、受け身もままならずにスタジアムの観客席に墜落する。現実だったらこのままどこかの骨が折れて致命傷だろうが、あいにくこの世界では強大な落下ダメージと算出された。
「っ……!?」
麻痺状態がようやく解けかかっている身体を起こし、《死銃》の追撃が来ないかスタジアムを確認するものの、車の爆炎が揺らめくそこに《死銃》の姿はない。煙に紛れているとかではなく、本当にその姿を消えさせたのだ。
「ショウキ。詳しい話は後にするけど、あいつは自由に姿を消せる。気をつけろ」
また別の場所に投げ出されていたシノンを連れてきながら、同じく警戒するキリトが呟いてきた。透明化――なるほど、このスタジアムに突如として現れたのも、その能力によるものらしい。
しかしその能力とやらにも穴はある。煙や爆炎が立ち込める場所で使えば、いくら透明になっていようが煙はその身体に纏わりつく。人間の身体という不自然な壁が入り、煙を運ぶ気流に不自然な流れが生じるためだ。スタジアムは先のバギーの爆炎で煙に巻かれており、見たところ不自然な気流の流れはない。
――ならば《死銃》は既にスタジアムを脱し、俺たちがいる観客席へと歩を進めている……!
「そこだ!」
そこだ、とは言ったものの、もちろん《死銃》の場所など分からない。ただのハッタリだ――が、《死銃》に向けて放つ一撃はハッタリでも何でもない。銃士Xとの決戦を見据えて弾薬を再装填していたAA−12ならば、この観客席一帯に弾丸を撒き散らすことなど容易い。
無差別無識別未照準。狙いなど合ったものでもない、それ故に破壊を撒き散らしていく鉄の暴風雨は、観客席の椅子や壁をあっけなく破壊し尽くしていく。その結果起きるのは、そこにいるであろう《死銃》への牽制。さらにその場所を僅かながらでも特定する、破片から生じる破壊の爆煙。
――そしてそれを見逃すキリトではない。
「うぉぉぉぉっ!」
キリトの叫びと同時に、AA−12の九つに別れる散弾の32発連続発射の弾薬が尽きる。なりふり構わずフルオートで発射していたため、あっさりと弾切れするのは当然だが、キリトはその発射によって生まれた隙を見逃さない。俺が新たな弾倉を装填するよりも早く、キリトは破壊された観客席へと飛び込むと、その光剣で空を斬った――目には見えないそこにいた者を。
「チッ……」
舌打ちとともに、何もなかった筈の空間からその灰マントが現れる。……いや、もはや灰マントというのは正し
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