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逆さの砂時計
策定
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心強い。では、詳細をお話しましょう。まず……」



 今の私達は、レゾネクトとアリアの追跡者にすぎない。
 『後を追っている』んだから、追いつけたとしても逃げられるばかりだ。
 では、彼らが敷いた現状を出し抜くにはどうすれば良いか。
 解決への糸口は、学徒時代の私に、師範が教えてくれていた。

「騎士って職業は、芸事やら礼儀やらを徹底的に仕込まれるおかげで外面は良いが、結局は人間から人間を護る大義名分を与えられた人殺しの集団だ」
「人殺しの集団」
「「お前ら、俺にとって都合が悪い奴らを、俺の代わりに殺してこい」と、上の人間共に免罪符の首輪をはめられた犬っころ達。鎖に繋がれている間は個人の意思なんぞ関係なく、言われた通りの相手を殺していくのが仕事だ。ある意味、楽な苦痛だよな」
「『楽な苦痛』、ですか?」
「そりゃあ気楽だろ? 飼い主が指した相手に噛みつくだけの簡単なお仕事なんだから。個人的に殺したくない相手でも、殺したら殺したで、飼い主を恨む余地は与えられてる。一番キツいのは鎖が無くなった状態だと思うぞ」
「誰の命令でもない殺傷行為、ですか」
「そ。騎士の称号を持ってる連中の大半は王候貴族に連なる名家の子息で、末は与えられた領地の守護が本分になるだろ? つまり、どんな時でも逐一命令してくれてた飼い主に、どんな時でもなんとかしてください系飼い主が追加されちゃうワケ。そーなるともー、大変大変」
「これまで指示に従っていれば良かった自分に、司令塔の役割が増えると」
「どこに・どれだけ・どれが・誰が、民衆という主人に噛みつく敵なのか。その敵を排除するにはどうするべきか。全部自己責任で決めなきゃならん。無論、命令系飼い主の基本姿勢は継承するにしてもだ。分かりやすい指先は自分の物でなきゃいけない。一つでも選択に失敗したら、上下の飼い主から一斉批判の的だし。仮に殺したくない相手を殺したとしても、恨める相手は居やしない。自分で決めたんだから当然だ。けど、やってらんねぇよなあ。命令系飼い主も背負ってる荷物には違いないが、こっちは上下左右前後から八つ当たり交じりの罵詈雑言や攻撃をまともに食らうんだし。超・理不尽」
「…………」
「だから、卒業する前に、『敵の定義』だけはきっちり覚えておけ。こいつを認識してるかどうかだけでも、結構いろんなものが変わって見えるから」
「『敵の定義』?」

『邪魔する奴は全部敵』

「………………身もフタもありませんね」
「分かりやすいだろ? でも、逆に言えばこうも取れるんだぞ」

『邪魔さえしなけりゃ、敵じゃない』

「それはそ……、う……? ……なんでしょうか?」
「こっちの動き方次第で相手の立ち位置が変わるって話さ。よく言うだろ。敵は誰かが決めるものじゃない。自分の心が作るもんだって。
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