第6話
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に到着し、各駅停車へと乗り換えを促す駅員のしゃがれた声がホームから聞こえてくる。
「座れば?」
蛍光灯の人工的な明るさとは違った、目を刺すような七月の日光をまぶしそうにしながら、優佳は空いた隣の席をポンポンと叩いた。
「いや、あと二駅だし、いいや」
ドアの上に設けられたディスプレイを見ながら、直樹が返事した。
優佳は「どうせなら座ればいいのに」と最初は思ったが、なんだか話しかけ辛くなりそうだと考え直して、結局それ以上勧めることは無かった。
警笛を一つ鳴らして、赤と青の帯をまとった銀色の列車が、西東京を目指して軽快に走り始めた。
* *
月姫学園の期末試験は火曜日から始まることが多い。授業は月曜日から土曜日の六日間行われるので、試験前の休日が日曜日の一日だけでは足りず、月曜日を休校にせざるを得ないからである。土曜日を休校にすればいいのではと思われがちだが、その日は午後の授業がないことから、生徒も教員もそんなことは望まないだろう。
浩徳はいつもこの日曜日に優大の家へと出向いて泊まり込みで勉強をしている。両者のカリキュラムは国語だけ共通であるから、どうやっても平均点にすら届かない優大が赤点回避のために泣きついてくるのだ。逆に、浩徳は理系科目を全て優大に解説してもらっているので、文系科目を教えるぐらい造作もないことであった。
ただ、今回はいつもと違って、優大は浩徳の家で勉強したいと言い始めた。浩徳は以前、新しいアクションゲームを買ったと優大に話したことがあり、どうせそれが目当てだろうと優大を問い詰めた。
「違うって。久しぶりにお前の家行きたいだけだからな。勘違いするなよ!」
にやつきながらわざとらしい訂正する優大に浩徳は苦笑してしまった。結局、優大の家に泊めてもらっているだけなのも厚かましく思えたので、快く引き受けることにした。
自宅に優大がやってくると聞くと、優佳の頭の中には「結月を優大に会わせよう」という考えしか浮かばなかった。だが、件のメールのこともあったので、結月にはただ「勉強合宿をしよう」とだけ伝えた。結月も高校生になって初めて友人の家に外泊するとあって、二つ返事で応じた。
結月は当日、待ち合わせに指定された駅で優佳を待っていた。「部の買い物があるから帰る途中で会おう」と聞いていたので、勉強道具と着替えが敷き詰められたバッグを両手で持ちながら、列車の到着を心待ちにしていた。
特急が到着して大勢の乗客が改札を慌ただしく通り過ぎる中、結月は優佳を見つけたが声をかけるのをためらってしまった。彼女は隣にいる男子と親しそうに話していたのだ。
「かたやまちゃん!」
結月がこちらを見ているのに気付いて、優佳は手を振って走ってきた。
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