第6話
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葉に智はいまいちピンとこない顔をしていたが、達矢は直樹の言わんとするところを理解したようで、「あー」と小さく声を上げた。
「かぐや姫が地上に下ろされたのは、月の都で犯した罪を償うためって考えるのが普通なんです」
「まじで?」
「はい。中二で習いました」
智は『懲役六年』とのギャップを痛感した。
「知らなかったなあ」
「知らなかったのにここまで書けてる方が、逆にすごいですよ」
「で、続き続き」
智は早く先を知りたいとペン先で手帳をリズムよく叩いて、直樹を急かした。
直樹が言うには、かぐや姫に与えられた罰とは「感情を奪われること」であるらしい。
かぐや姫は月の都の民であるので、人間の持つ感情というものが欠如していた。だが、翁や媼と起居を共にし、色好みと呼ばれる男衆との攻防戦、帝の求婚を経ることで、喜怒哀楽のなんたるかを知る。豊かな感情を持った一人の人間として新たな人生へと歩みだそうという最中で、感情を奪われ、月へと還されてしまう、というのだ。
「えー、残酷だなあ」
さも嫌そうに、それでも興味のあるような声を智は出した。
「でも、いいなあ、そういうの」
「そうですよね。良く考えられてますよね」
「そうか。ならその部分をしっかり描写するか」
智は手帳に書き込んでいた『かすみの感情の変化』という文字の下に、二つの罫線を引っ張った。
「クラタツはなんかある?」
「いいえ。付け足すやつだけで十分だと思います」
達也は恐縮そうに答えた。
「オッケー。で、今回はクラタツが『舞台』で、森本が『芸術』ね」
さらりと智の放った言葉に、直樹が嫌そうな顔をする。
「うわあ、まじですか……」
「衣装の手間とかかからないようにしたから、これぐらいゆるしてよ」
智は困り半分笑い半分で直樹をなだめた。
「いや、別に大丈夫なんですよ。衣装とかについては」
直樹は顔の前で手を振る。
「ただ、ヒロさんの妹が手芸部に入ったんで、絶対絡まれるんですよ」
なぜそこで浩徳の名前が出るのか分からなかった智は、僅かながら頭を巡らせた後に合点がいったような顔をした。
「ああ、あいつと森本、家近いもんな」
「はい。なので、ちょっと面倒くさいんです」
智には幼馴染がいないから同じような場面にあったことは無かったが、それでも直樹の言っていることは分かったような気がした。自分の過去を知っている人物―――それも、ある程度の距離をわきまえているような人物ではなく、竹馬の友とでもいえるような親しい仲の人物―――が所属しているパーティに足を踏み入れて、その人物に過去の自分を笑いの種として使われてしまうというのは、何とも恥ず
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