二話:闇の書覚醒
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「私達は蒐集を行うための存在ですが主の命を何よりも尊重します。ですので、あなたが止めても主はやてが望めば私達は動きます」
シャマルは切嗣がはやてに蒐集をさせないように言いつけることを危惧して先回りして主以外の命は受けないと暗に告げる。
だが切嗣としてはそんなことなど考えていないのでただ騎士達が主の命令であれば蒐集をしない行動をとることもあるのだと知る。
それほどまでに主という存在はヴォルケンリッターにとっては大きいのだ。
恐らくはプログラムにそう組み込まれているのだろうとあたりをつけ切嗣は目を瞑る。
道具は所詮道具でしかない。手足を生やし喋っていても彼等は道具なのだと結論付け立ち上がる。
「なら今日の所は話は終わりだ。詳しくははやてが起きてから話そう」
無言で頷く騎士達を見届けてその日は終わりを告げたのだった。
「……どうやら僕は間違っていたみたいだ」
「? 待ったはなしですよ、お父上」
あの日のことを思い出し盤上に視線を戻しながら切嗣はポツリと呟く。
シグナムは不思議そうな顔をするが打ち間違えたのだろうと検討をつけて視線を戻す。
その姿にこれのどこが道具だと以前の自分を嘲笑する。
道具は自らの意思で戦えない。
ならばこんなにも感情豊かなヴォルケンリッター達が道具のはずがない。
その事実がさらに切嗣の心をナイフで切りつけてくる。
ヴォルケンリッターを人間と認めることは―――犠牲が増えるということなのだから。
道具であれば犠牲と考えるまでもなかった。一発の銃弾を失う程度の気持ちですんだ。
だが、道具だとは思えなかった。人間だと認めてしまった。家族だと認識してしまった。
仮に自分が主であれば徹底して道具として扱う事もできただろう。
しかし、主であるはやては彼等を家族として認め、愛した。
そんな彼女とずっと暮らしていていつまでも道具扱いできるはずなどない。
彼は演技でも何でもなく彼女を愛する父親なのだから。
「でも、本当によかったの、はやてちゃん? 蒐集を行えば歩けるようになるのかもしれないのよ」
ふいにシャマルがそんなことを口にする。
それは切嗣にとっても大いに問題なことでもあった。
はやては闇の書の蒐集をヴォルケンリッターに禁じたのである。
これが普通の親であれば娘の心の綺麗さに喜ぶところだろうが切嗣は計画に支障を及ぼす結果だと苦い思いをしていた。
「だから人様に迷惑をかけるような行為はやったらあかんって。な、おとん?」
「……うん、そうだね」
「一気に人が増えて毎日が楽しいんや。これ以上望んだら罰が当たるわ」
だというのに……同時にはやてがまだ生きられることに喜ぶ自分が居る。
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