追憶-レミニセンス-part2/忍び寄る影
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王女アンリエッタは水の精霊の御許で誓います。ウェールズ様を永久に愛し続けることを」
「……」
一人の男を、それも自分への深い想いを口にしたアンリエッタは、やはりとても美しいものだった。ウェールズは心の底から言葉を失っていた。一人の人として、男として身も心も美しく、愛しい女性から愛の言葉を受けてうれしく思わない男などいないだろう。だが…。
「さあ、ウェールズ様も」
誓ってくださいませ、とアンリエッタは催促する。しかし、ウェールズは湖畔から水に足を踏み入れなかった。黙とうするように目を閉じると、湖に向けて誓いの言葉を告げた。
「アルビオン王国皇太子ウェールズは、水の精霊の御許で誓おう!いつかアンリエッタと共に、このラグドリアン湖の湖畔を、太陽の下で誰の目も憚ることなく手を取り歩くことを」
ほら、誓ったよ。はにかんだ笑みを見せるウェールズを見た時のアンリエッタは、寂しそうに呟いた。その声は小さく、ウェールズの耳には聞き取れなかった。
「…愛を、誓ってくださらないの?」
「さあ、上がっておいで。足が冷えてしまうよ」
湖畔から手を伸ばしてくるウェールズの手を、愛を誓ってくれなかったことへの不満を抱きつつもアンリエッタは手に取ろうとした。
しかし、その手を取ることはできなかった。
周囲を照らしていた月の光が、突然息を吹きかけられ消えた蝋燭の火の光のように、パッと消え去り、辺りは僅かな光をも感じさせない闇に塗り固められた。夢の中とはいえ、思わぬ出来事にアンリエッタは足を止めてしまう。一体これは…。彼女はウェールズの方に視線を向ける。瞬間、彼女の瞳は絶望に染まった。
ウェールズだと思っていた『その人』は、髪がずるっと落ちて、さらに目や耳、そして服がずるずると地面にずり落ちていく。まるで、氷が熱で溶かされていくように。
残ったのは………
ただの木製のマネキンが自分に手を伸ばす姿勢のまま立っている姿だった。
「…え…?」
アンリエッタが茫然としていると、ウェールズの姿をかたどっていたマネキンは破裂するようにバン!と弾けて粉々となった。彼女はショックのあまり目を見開いて、口を覆い隠した。
今のは…なんだ?私の目の前で言った何が起きたというの?
が、さらに彼女の動揺を誘う声が耳に飛び込んできた。
「誓いたかったさ」
振り返るアンリエッタ。そこに立っていたのは、たった今マネキンとなって砕け散ったはずのウェールズだった。
その頃、サイトは一人でジャンバードのコクピットで待機していた。
…暇だ、サイトもゼロも、デルフも同時に思った。ここでただじっと待っているのが、あまりにもどかしい。
ルイズとハルナも妖精亭で待っているはずだ。あまり心配をかけるわけにはいかない。しかもハルナはまだ体調が戻っていない。こう
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