思い出-メモリーズ-part2/妖精の歌
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きた。急に彼女にしがみつかれたシュウは一瞬動揺しかけたが、顔をうずめている彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。
「…大丈夫か?」
「……」
テファは顔をうずめたまま、自分の泣き顔を決して見せようとしなかった。自分の泣き顔を見られたがる人間なんていないだろう。その気持ちを察して、シュウはしばらくこのままにしてやることにした。
その日の夜、シュウはテファを連れて村に帰還した。
さすがに帰ってきた時には泣き止んでいたのだが、それでも彼女は落ち込み気味だったことに変わりなかった。子供達から気を使われたが、作り笑いを浮かべて何でもないふりをした。シュウは、子供たちからテファを泣かせたのではと疑われてしまった。違う、と素面で答えても疑いの視線は晴れず、説得も面倒になったので、その話について肯定も否定せず子供達の想像に委ねることにした。
シュウはアリゲラやヤマワラワとの連戦続きで十分な休息を取っていなかったため、昨日はテファを含めた皆が寝静まったところで、ストーンフリューゲルを呼び出し、そのままその中で回復しながら一泊したのだった。
翌朝、太陽が昇り始め、空の色が闇の色から青く染まり始めた頃、朝の冷たい空気に当てられながらシュウは戻ってきた。
村に戻って、マチルダが使っていた部屋へ向かおうとしたが、村が見えてきたところで…彼の耳に何かが聞こえてきた。
(これは…歌、か?)
誰の歌だろう。それに、歌に合わせてポロン?と弦楽器のような音も聞こえてくる。シュウは村の方へ向かう。
神の左手ガンダールヴ。
勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。
心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。
知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人。
記すことさえ、はばかられる。
四人の僕を従えて、我はこの地へやってきた。
「…………!」
歌い手は、テファだった。ハープを片手に、美しい調べを奏でながら、澄み渡るような美し歌声で歌っていた。
シュウは夢か幻か、何かを見ているように思えた。ハープを奏で、神々しい金髪をなびかせながら歌う彼女の姿が余りにも美しくて、色沙汰に興味を持とうとしてなかったシュウでさえ目を奪われていた。
「…あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
「いや、今起きたところだ」
「「……………」」
シュウが特に話を長続きさせようとせず会話が途切れてしまったせいで、二人の間に奇妙な沈黙が流れた。
「な、なんか…恥ずかしいな。歌聞かれてたなんて」
ふと、自分が歌っていた姿を見られたことを思い出したテファは恥ずかしさを覚えて頬を染めた
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