喪失-ロスト-part2/ルイズの結婚
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いいの?」
気が付くと、ルイズは目元に影絵を作って俯いていた。その声は、何かを押し殺しているようにどこか震えていた。
「私がワルドと結婚しても…」
「な、何言ってんだよ?俺はあくまでお前の使い魔で、ワルドはお前の婚約者だろ」
バシィイイイイン!!!
その瞬間、サイトはルイズに顔をひっぱたかれた。
「いきなり何すんだ!?」
サイトにとって予想もできなかったことに、彼はルイズを睨み付けた。だが、すぐに呆然とした表情に一変した。
「馬鹿!!!サイトの馬鹿!!あんたなんか、大っ嫌い!!!」
彼女の目からは、涙がぼろぼろと溢れ出ていた。涙ながらにサイトに暴言を吐いて、ルイズはサイトに背を向けどこかへ駆け出して行った。
「………」
どうしてルイズは自分にあんな問意を投げかけてきたのか、どうして自分をぶっ叩いてきたのか、その理由がわからないまま暗い廊下にて遠ざかるその背を、サイトはただ見てるしかなかった。
一方で、アルビオンのサウスゴータ地方にある森の中の、ウエストウッド村。
「やけど、まだ治らない?」
部屋のベッドに乗り出して尋ねてくるエマに、シュウはいつも通りの涼しげな態度で言った。
「まだ痛むが、順調に回復している。大丈夫だ」
テファは、シュウの新しい包帯を巻いて看病に当たっていた。酷いやけどだ。マチルダの話によると、街の火事からその燃え盛る家から人を助けるためにこの怪我を負ったのだと言っていたが、何となくそうとは思えなかった。もっとなにか、別の恐ろしい出来事に直面してこうなったのではないのかと思えてならなかった。
ふと、彼の顔を見た刹那、あの日の朝に見た悪夢の光景が一瞬、テファの脳裏をよぎった。
「…どうした?」
「え?あ、ううん。なんでもないわ。すぐごはんの仕度するね」
自分をじっと見てくるテファに、シュウは何か用でもあるのかと思って首を傾げたが、テファは首を横に振った。
シュウは、これまでひと月以上の期間をこの村で過ごした。
ティファニアはとても優しい少女だ。悪い言い方をすれば甘ったるいともいえるくらいに。何者も殺さず、何者も脅かさない。存在自体が平和を体現しているように彼女は見た目からして美しく性格も穏かだ。
一応自分はそんな彼女の使い魔として呼び出され、今日もまた使い魔と言うか、子供たちのお守りをしながら家事に勤しんでいる。子供は本当は厄介で苦手なのだが、別に嫌いと言うわけではない。この子たちやテファ、マチルダを守ることに光の力を使うことに躊躇いはなにもない。
シュウは脳裏に、これまでの人生で積み重ねてきた過去の記憶を思い返す。TLTに拾われ、ナイトレイダーに入隊する以前、どれもこれもろくでもない記憶ばかりがぎっしりだ。どんな内容かだなんて、思い出したくもない。悪い記憶じゃないのは、憐たち
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