喪失-ロスト-part2/ルイズの結婚
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、サイトは迷わず頷いた。
「ああ…そうだ。王子様は、死ぬのが…怖くないんですか?」
「我々を案じてくれているのか。君は優しいな」
ウェールズはそんなサイトの心遣いに笑みを返した。ふう…と息を吐くと、彼は見栄を張らずに正直に言った。
「そうだね。君の言う通り死とは恐ろしいものだ。戦いにおいて死は必ず付きまとう者だ。だから晩餐会でも皆、明るくふるまって恐怖を吹き飛ばそうとしている。もし、今度の戦いで敗れたら我が軍は確実に滅ぶからね。しかし、守るべきものが恐怖を和らげてくれる」
貴族の守ろうとしているもの。かつてのルイズがそうだったように、やはりあんなものを守ろうとしているのか?
「何を守るって言うんだ。誇り?名誉?それを守るための死ぬなんて馬鹿げてる!」
そんなものは、人の命と比べたら足元にも及ばないモノじゃないか。努力さえすれば取り戻せる可能性がある。だが、命は一度失ったらもう二度と帰らないのが自然だ。この時点で、命と貴族の誇りや名誉の価値なんて天地の差であることが目に見えずともわかる。
ウェールズは遠くを見つめるようにして答えた。
「奴ら貴族派、レコン・キスタはブリミル教の悲願、エルフに奪われた『聖地』を取り戻すという理想を掲げハルケギニアを統一しようとしている。しかし奴らはその過程で流れる血の事をまるで考えていない。現に、奴らに攻め入られた町村は全て怪獣や敵軍に全て蹂躙しつくされ、跡形もなく消されたのだから。誰かが止めなければ、ハルケギニアは統一の代償に、全土が滅び去ったアルビオンの町村のようになるのは間違いない。そうなれば、元の大地に戻るには長いときを有する。その間にまた争いが起らないともいえない」
なるほど、単にカッコつけて死ぬ…なんてことをリアルにするつもりはないようだ。でも、相手は怪獣を操り、さらには人間の戦力でさえも王党派を凌駕している。いかに炎の空賊たちやグレンファイヤーと言う強い味方がいても、サイトは怪獣の脅威をその身を持って知っている。グレンに対応して、きっと一体だけじゃなく何体もの怪獣を呼び寄せる可能性が高い。つまり、勝ち目より負ける可能性の方が高い。
「俺、ルイズが言ってたように亡命した方がいいって思うんです。怪獣の脅威は、俺が一番わかってるつもりです!」
「怪獣のことを理解している?」
いかに怪獣の被害にあったといっても、トリスタニアに現れた個体しか今のところウェールズは知らない。にも拘らず、この少年は以前から怪獣の存在を知っていたかのような言い回しをしている。
「俺は、その…ハルケギニアから遠く離れた場所に故郷があります。これまで何度か怪獣の危険性を体感してきました。確かにグレンファイヤーは強いです。でも、きっと敵は今頃彼を倒すための算段をたてている。これまで、俺が知っている侵略者たちはずっとそうでした」
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