婚約者-ワルド-part3/ゼロの過ち
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このハルケギニアに蔓延してやがるんだから」
そうだ、古いしきたりや祖先たちから受け継いだ権力に囚われ、自分たちの利益のためならば平気で高い身分を利用して好き放題やらかす愚か者が、特にこのトリステインにわんさかいる。そいつらのために、こいつが一重に戦う義理なんかないはずだ。
「正義の味方を名乗った覚えはない…だが、俺に戦いを下りる資格はない」
シュウは、遠い目をしながらマチルダに言った。マントの袖から見える手が、握り拳を作っているのが僅かに見えた。
「…なんか、自分から自分を追い詰めてるみたいに見えるね。なにか…」
「マチルダさん」
シュウは、マチルダの名を呼んで、彼女が次に言おうとした言葉を遮った。
「それ以上は、聞かないでくれ」
やっぱり、前に思った通りかもしれない。
ウエストウッド村は村そのものが孤児院だ。戦争やら親の虐待、そう言った理由であの子たちは村に来ていた。来たばかりの頃のあの子たちの中には、他人心を許しきれずに敵意さえ向ける子もいる。この子は、ウエストウッド村の子供たちが村に来たばかりの頃と何となく似ている気がした。
シュウは…誰にも話したくない何かを、まだ隠している。
「ずるい奴だね…。でも、あまり詮索するのも褒められた話じゃないから聞かないでおくさ。けど、あんたはテファの使い魔なんだからね、そこんとこ忘れるんじゃないよ?」
マチルダは、注がれたいっぱいのワインの入ったグラスをシュウの前に掲げてみせる。
「…ああ」
一方で、二人のいる宿屋『女神の杵』に新たな客がやってきた。
「ここで一泊しよう。次の船は明日の夜に出るそうだからね」
この宿の新たにやってきた客とは、サイトたちアンリエッタのお忍びの任務を請け負った一行である。ワルドがカウンターにいる宿主に部屋に空き部屋がないかを相談している間、サイトは馬から荷を下ろし、ギーシュは馬を馬小屋に連れて行った。
(ふう…ゼロをなだめるのに疲れた)
荷物を確認するサイトの下に、ルイズが歩み寄ってきた。しかし、サイトはルイズを避けるかのように、彼女が来ても顔を向けようとせず、荷物をまとめていた。
あまり下手に情が移るのも、後が辛いだけだ。サイトはこれ以上ルイズたちに触れることに抵抗があった。いや…実際は違っていた。サイトはワルドと仲良くするルイズを見てあまりいい気分ではいられなかったのだ。要は、嫉妬である。だから、ルイズと顔を合わせ辛かった。それがルイズへの好意なのか、それとも一日を共に長く過ごすようになったおかげで兄妹のような家族的関係を感じていたからなのかはわからない。
「サイト、さっきからどうしたのよ。不味いクックベリーパイを食べたみたいな顔して」
「いや、別に…」
「別にって…何よその態度」
使い魔の癖にこの態度は何事だ。不遜な態度と受けた
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