婚約者-ワルド-part3/ゼロの過ち
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ラ・ロシェールの街。
サイトたちがここへ着く前に、ある女性客がこの街の宿屋『女神の杵』のバーで飲んでいた。ローブで素顔を覆い隠したその女性の手には、一枚の紙が握られている。
紙の内容は、ある屋敷の見取り図だった。
彼女の仕事は、この屋敷の主である成金貴族の隠す持つ財宝を盗み裏ルートのオークションにかけて換金すること。全ては、愛する妹と、彼女と自分を慕う戦災孤児たちの平和な日々のため。
今回の貴族の屋敷は、かなり難易度の低いものだった。この街は怪獣の被害がないから、街の人たちにとって怪獣の存在などまだ絵空事でしかないため、ここの領主の貴族も間違いなく平和ボケしているはず。楽なのはいいことだし、捕まらないだけましだが、これはこれでつまらない。
「退屈そうだな?」
ふと、彼女の隣の座席に、今の彼女と似たような恰好をしている、仮面の男が座った。もうお分かりだろう。チェルノボーグから囚人を連れだしたあの男である。女性…土くれのフーケことマチルダは警戒して杖へ手を伸ばそうとしたが、その前に仮面の男は杖をマチルダに突き付けていた。
「ようやく見つけた貴重な人材なんだ。ここで流血沙汰を起こさせないでくれよ?我らは一人でも優秀なメイジを多く必要としているからな。マチルダ・オブ・サウスゴータ」
自分の本名を知るこの仮面の男に、フーケは最大限の警戒心をむき出しにして男を睨んだ。
「…悪いけど、信用できないね、こんな形で無理やり女を従わせようとする男なんて」
「まあそう言うな。とりあえず仕事の内容を聞いてから選択してくれ」
「…ならサッサと言うことだね」
もったいぶるな、これくらい言ってもいいだろう。マチルダは立場が弱い状態とはいえ、強気の姿勢のまま男に言って見せる。
「アルビオンに、もう一度仕えてみないか?」
それを聞くと、マチルダは鼻で笑い飛ばした。
「父を殺し、家名を奪った王家に仕える気なんてないね」
今すぐにでも怒鳴り散らしたいほどに言ってやりたいことだった。しかし、男は冷静な態度を保ったまま続ける。
「何もアルビオン王家に仕えろとは言ってないさ。もうじき、無能な王家は倒れるのだからな」
「だとしてもお断りだね。あたし、今のアルビオンの貴族は大嫌いだからね」
話を聞く辺り、この男はアルビオンの貴族派…つまり革命軍レコンキスタの手のものだと言うこと。レコンキスタは共和制という、貴族と平民を平等と扱い、選ばれた代表者による政治を行う…平民にとって甘い夢を見せる理想を掲げているくせに、噂だとやっていることは、王党派よりたちが悪いと聞く。なおさら信用に欠ける。
それにレコンキスタの最終目的とされている、聖地の奪還?馬鹿馬鹿しい。エルフはたった一人でも多人数のメイジを赤子の手を捻るように簡単に返り討ちにできるそうだ。犬死するのが目に見えているし
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