召喚者-ティファニア-part2/もう一人の地球人
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と掴みにくい奴だ。自分がこの村から出稼ぎで出るまで、結局彼は村の子たちと馴染まないままだった。この村に戻ってからはまだ様子を見ていないが、あんな調子でこの先やっていけるのだろうか。どうしたものかと悩むマチルダ。テファに召喚を勧めた責任があるから、シュウへの扱いをないがしろにするわけにはいかない。
「腹の奥底で何か悪いこと企んでなきゃいいけどな…」
故郷から無理やりこんな田舎へ呼び出されたというのに、シュウは自分たちに何一つそのことについて恨み節を言ってこないことは不思議だ。いや、口には出さないままで実際は心の奥底でどす黒い感情を湧き上がらせようとしているのでは?
しかし、それを聞いていたテファが首を横に振ってそれを否定してきた。
「ううん、そんなことないわ、マチルダ姉さん。シュウは、ああ見えてとても優しい人なの」
「え…!?」
まさか妹分からこんな言葉を聞くとは思いもしなかった。なにせテファはシュウに引け目やら恐怖やらも感じて、彼に勇気を出して喋ろうとしても話が全く持って続かないほど馴染み切れていなかったというのに。
「ほら、あれ」
テファがふと、庭の草原の上で笑みを見せあっているサマンサとエマの二人が手に、何か膨らみきった色の物体を持っている。なんだあれは?マチルダは目を細める。
「あれは、細長く作られた風船を膨らまして、適当にねじって作った動物なの。シュウは『ペンシルバルーン』って呼んでいたわ。故郷から偶然持ってきていたものを、あの子たちのために作ってくれたの」
「あいつが…かい…!?」
ペンシルバルーン、というものがなんなのかはわからないが、確かにサマンサたちの持っている細長い風船をねじって適当な形にしたものは、犬やウサギのような形をしている。だがそれ以上に意外なのは、あの他人に対して冷たい印象しか抱かせないような男が子供たちのために貴重な私物を使ったと言うこと。自分が一度村を離れている間に何かあったのだろうか?
「姉さんが戻ってくる先週のことなんだけど…」
テファの口から、どうして彼のことを優しいなどという言葉が出たのか…その理由が明かされた。
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