Another94 闇に堕ちる時
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賢の兄である一乗寺治は常に孤独であった。
今の賢のように大輔のような友達はおらず、遼だけが自分にとって唯一の理解者であったが、最近は遼まで新設された学園に転校し、賢の味方になる始末であった。
勉強もスポーツも何をやらせてもこなせてしまう天才の治だが、その才能が災いして、友人に妬まれ、態度を変えられることもしばしばあった。
遼はそんな等身大の自分を見てくれる唯一の味方だったが、やはり遼も賢の味方をする。
同じ天才でも生まれた時間の差でこうも差別される。
弟の賢を羨んだことなど数知れない。
治「何で僕は選ばれなかったんだ…何で賢はデジタルワールドに行けて、僕は…デジタルワールドに行けないんだ」
空を見上げる治。
かつて、賢は同じ選ばれし子供達の仲間と共にデジタルワールドに行った。
近いようでとても遠い世界。
何故デジタルワールドは自分を拒絶するのだろうか?
治「行きたい…デジタルワールド…に」
『デジタルワールドに行きたいか?』
治「!?誰だ!!?」
誰とも知れない誰かに望みを言い当てられ、治は半ば狂乱しながら叫んだ。
『お前が心の中の良心を捨て去ると言うのならデジタルワールドに連れて行ってやるぞ』
治「本当に…?本当にデジタルワールドに行けるのか!!?こんな世界にいなくてもいいのか!!?」
『そうだ。』
治「なら捨てる!!デジタルワールドに行けるなら!!何だってする!!」
天才少年・一乗寺治という束縛から逃れたいが故に叫んだ。
それが救いの手ではなく悪魔の手だということに気付かず。
今の治には、その甘美な誘いを拒絶する理性は残ってはいなかった。
『分かった』
了承の言葉と同時に、いつの間にか周囲に立ち込めていた真っ白な靄のようなものが、治の右耳から彼の中に侵入した。
僅かに残っていた理性を食い荒らされ消し飛ばされ、彼は息を詰まらせる。
今この時、一乗寺治の善の心が死に、冷酷な皇帝が誕生した瞬間であった。
そして同時刻。
賢「あ」
及川「どうしたのかな一乗寺君?」
聖竜学園の教師としてパートナーと共に、仕事をしていた及川はデータディスクを入れたケースの中を探していた賢に気づいて声をかける。
賢「先生、ああ、大したことじゃないんです。新しいデジヴァイスの設計図を入れたディスクをどうやら家に忘れてしまったみたいで」
及川「デジヴァイス…確か、君達が開発を進めていた最新型デジヴァイスのかい?」
賢「ええ」
及川「大丈夫なのかい?」
賢「まあ、大丈夫でしょう。父さ
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