王都-トリスタニア-part2/傲慢なる戦士
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下ろした。
「ママ!!」
その子供は、母親の胸の中へ一目散に飛び込んだ。
「たかが平民のガキのために…」
幾人かの貴族たちは驚きを隠せなかった。得体の知れない巨人が、たった一人の子供のために命を張って守ってくれたなど、にわかに信じがたい現実だった。
「ち…くうしょうが…痛てえ」
傷ついた肩を抑えながらゼロはディノゾールの方を振り返る。ディノゾールは暴れることしか能がないのか、吠え続けてこちらに殺意をむき出しにしている。
このまま避け続けても埒が明かない。一気に止めを刺そう。
ディノゾールが再び細く見えない舌を振い、切り裂き攻撃をゼロに仕掛ける。それをかいくぐって行ったゼロは鎧で重くなった体をものともせずに、助走をつけながら駆け出し、空中回転しながらディノゾールに向かって炎を守った右足を突き出しながら急降下した。
〈ウルトラゼロキック!〉
「デアアアアアアアアアア!!!!」
ロケットのように降ってきたゼロの必殺の蹴り技は、ディノゾールの背中をボカッ!!と抉るように深く陥没させた。ゼロは後ろ向きに回転しながら地面に着地したと同時に、ディノゾールは力尽きてその場に倒れ伏したと同時に、体内の起爆物がはじけたかのごとく大爆発した。
「や、やった…!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
街を蹂躙した悪魔が、謎の鎧の戦士によって打ち破られた。トリスタニアの街の人々は飛び上がるほど大いに喜んだ。悪夢のような時間は、もう終わったのだ。
「ありがとう!ウルトラマーーーーン!!!!」
ゼロへの感謝の言葉が飛び交う。ゼロ自身、この声は決して嫌いではない。自分をよく思ってくれる奴がいるというのは心地よいものだと知っているから。
だが、彼はそれ以上に不機嫌だった。
「サイト、てめえなんで邪魔しやがった!?お前が余計なことしなけりゃ、もっと早くあの怪獣を倒せたってのに!」
自分の中にいるサイトに向かって、彼は不平を吐き飛ばした。余計なこと…それはさっき彼と同化していたサイトの意思がゼロよりも強く働いたせいで、ゼロはさっき逃げ遅れた子をかばって傷を負ってしまった時のことだ。大概のウルトラマンは身を挺してまで小さな目の前の命を助けるのが必然的に思えるだろう。だがゼロはそうではなかった。それが、サイトには許せなかった。同化しているゼロを巻き込み、迷惑をかけてしまったと言う罪悪感は確かにある、だがそれ以上にゼロへの不満が募っていた。
それは、地上からゼロの勝利に大喜びを示したキュルケと、そんな彼女に抱きつかれるタバサとは打って変わって、ルイズもどこか不満げな表情だった。
『バカヤロー!!!』
「あ?」
脳内に我慢ならなくなったサイトの怒鳴り声が響く。
『ゼロ、お前なんて下手くそな戦い方だ!!周りを見てみやがれ!!』
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