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狩人が斬り裂く
古狗
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 トカケの疑問に、伊花は首を振る。

「この弾丸が銀でできていたのなら、エクソシストの者だということが断定できたのだが、成分分析の結果、これは銀ではない。水銀だということが判明した」

 全員が首をかしげたくなった。少しでも化学に精通しているものならわかることだろうが、水銀は常温だと液体の性質を持ちながら金属の性質も持った物質だ。このような形に成形することはできない。水銀も固形化するのだが、それは零下38.8度の時だ。無論、どうにか弾丸の形に成形して冷やし、固形化することができたとしてもそれを銃に込めてしばらくすれば間違いなく液体に戻るし、発砲したときの熱で確実に溶ける。
 だが目の前にある弾丸は、常温でも溶けていない上、発砲時の高熱にさらされたであろうにその形を残していた。現代化学ではありえないことであるし、西洋の錬金術でも長く水銀を固形化することはできないのだ。

「付け加えるならば、これは不発弾のようなものだ、恐らく。狗神憑の身体の中には何かが破裂したような空洞があり、そこには液化した水銀が溜まっていた。本来ならば弾丸が体内で液化しその際に炸裂、内傷を負わせるという代物なのだろう」

「つまり、アンタはこう言いたいのかい? 下手人は狗殺しの武器、それに謎めいた技術も持ち合わせていると」

 タキの目隠しの下の目が鋭くなる。

「そんな物は到底個人が用意できるようなものじゃあないね。背後で下手人(そいつ)を支援している組織、それもそれなりの規模がないと無理だ。そんなのが動いているのなら、絶対に尻尾はどこかに出ているはずだよ」

 タキは重衛を睨みつける。目は隠れているが、その鋭い眼光は重衛に伝わった。

「おい犬護、お前たちは私たちを支援するためだけに存在しているのだろう? そんな連中が何故未だに足跡すらつかめていない? 資料によると大旧杜の奥まで侵入されているそうじゃあないか。お前たちの目は、鼻先で象が動いているのにも気づけないほどの節穴なのかい?」

 心にもない。トカケは「これこれ」と一見タキをとがめているように見えるが、その内心はタキと同意見だった。重衛は面目ないと頭を下げた。

「犬護にも調査はしてもらっているが、そのような組織は影すら見当たらない。犬護の調査能力をもってしても見つからないのならば、その組織とやらはよほど隠密能力に長けているか、あるいはそもそも組織などこの世に存在していないのかもしれない」

 伊花が重衛をフォローするが、タキはフンッと鼻を鳴らす。彼女の目には伊花が「無能に同情・同調する無能」にしか映っていないのだ。

「何れにせよ、件の下手人は放置しておくわけにはいかない。狗神憑を殺すだけで何もないのなら放置してもよかったのだが、鎮められていない狗神憑の死体からは
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