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狩人が斬り裂く
古狗
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、狗神を狩り鎮めることができるのは自分たちだけであるということは一片も疑った事がないからだ。

「一ついいかえ?」

 挙手をする者がいた。小柄な老婆、犬尾当主『犬尾トカケ』だ。後ろには孫の『犬尾ユズリ』が控えている。

「ホンマに儂ら以外に狗神憑を鎮めちょることができん輩がいるけ? 儂らが狗神憑を鎮めることができんのは、常人離れしった大狗神の力を使うことができちょるってのもあんが、一番は『鎮音』の技術をもっちょるからやけ。それないモンが狗神と渡り合えると?」

 トカケの疑問は最もだ。狗神憑は基本的に殺すことはできない。剣で切ろうが槍で刺そうが銃で蜂の巣にしようが、瞬く間に傷がふさがってしまうからだ。完全な死を与えるには、犬上筋の者が使う『鎮音』という技術をもって、その魂から清めなければならない。この技術を持っているのは、恐らく彼女らだけであろう。外部の者が使えるとは思えない。

「それに関しては私が」

 重衛が立ち上がる。

「狗神憑は基本的に『鎮音』を用いなければ鎮めることはできませんが、ただ殺すということなら、相応の武器があれば可能です。弐ノ木様が代々受け継いできた狗殺しの武器ならば可能でしょうし、犬尾様が作られた『狗貫』の小太刀は狗神憑の治癒能力を阻害することができます。外部にもその手の術や技術はありますので、おそらくその筋の者の仕業ではないかと思われます」

 重衛の説明が終わる。伊花は一言「ありがとう」と言って重衛を座らせた。

「そんなら、弐ノ木のとこのジジイの仕業って線はないのかい?」

 皺がれた、しかし威圧するような力をもった声でそう尋ねたのは目を目隠しのようなヴェールで隠した老婆、犬中当主『犬中タキ』だ。後ろには孫の『犬中マキ』が控えている。

「それはない。あの老人はもう狗神憑と長く戦える身体ではないし、彼の鍛えた武器は狩られた狗神憑の傷口と一致しなかった。念のため、重衛の娘たちに弐ノ木家を家宅捜索させたが、それらしい武器は出てこなかった」

 弐ノ木は刀鍛冶の家系、刀以外にも薙刀や矢尻を作ってはいるが、彼の家の武器はどれも洗練されている。今回の狗神憑の死体につけられた傷は、どれも荒々しくそぎ落とされたようなもの、粗雑な槍で突かれたようなもの、棒状の何かで撲殺されたようなものばかりだ。洗練されてはいない、ただ殺せればなんだって良いという意思すら伝わってきそうだ。

「そして何より、このような物は弐ノ木の鍛造技術をもってしても製造不可能だ」

 伊花は透明な袋を掲げる。それは資料の写真にもあった。弾丸だ。銀色の弾丸。狗神憑の死体を解剖したところ、体内から摘出されたものだ。

「ふーん、銀の弾丸っちゅーことは、下手人は西洋の……なんちゅったか、『えくそしすと』って連中の仕業け
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